■リヴァイアサン大祭『2人の共同制作!…ってことでいいよね?』
青空の下、白銀に染められた世界が一面に広がっていた。「雪だよー!」
大祭に大盛り上がりのメイは、シュルスの腕をむんずと掴み上げて大興奮。
「せっかくだから雪だるま作ろうよ!」
きゃーっ、とメイはシュルスの腕を離れて楽しそうに雪世界の中で小躍りしていた。
シュルスはしばらくそんなメイの姿を目で追い、帽子のツバをきゅっと引く。
「まぁ、せっかくの祭りだから楽しむのもいいだろう」
妥協したような物言いではあるが、彼の口元には嬉しそうに笑みが浮かんでいた。
雪の塊を転がしながら、シュルスの靴が雪に埋もれて脱げてしまったのをメイが笑ったり、逆にメイが転んでしまって顔を雪まみれにしているのをシュルスが鼻で笑ったり。そんな出来事を交えつつ、2人は作業を進めていく。
ようやく雪だるまの形になったものに、2人は寄り添って顔を作る。
「おい、たれ目だぞ」
「えー? じゃあまゆげをつりあげれば問題ないよ!」
「鼻は長いのが相場だろうな」
「じゃあ口はこうして……あはは何これ!」
楽しそうに口をあけて笑うメイは、そのまますかさずシュルスに手を伸ばした。
「ちょっと借りていーい?」
シュルスが返事をする前に帽子を取って雪だるまに乗せる。相変わらずわがままな様子に呆れ顔のシュルス。
(「うん、シュルスくんの帽子があるだけでかっこよく見えるね」)
メイは頬を桃色に染めながら、照れくさそうに笑っていた。
空は次第に色合いを深めていき、しんしんと雪が降り始めた。
「はい、ここにすわーる」
メイは近くにあったベンチにシュルスを無理やり座らせ、さも当然のように彼の膝の上に乗った。
この行動にはシュルスも驚いたようで「おいっ」と声を上げる。
怒りながらも困惑しているシュルスの顔を振り返ることはせずにメイは嬉しそうに目を細めて雪だるまを見つめていた。
「雪だるま作ったことある?」
「小さいころはな」
「これはかわいくできた? ね、ね」
首だけを振り返って瞳をきらきら輝かせながら尋ねると、シュルスは決まりが悪そうに横を向いてしまった。
「かわいくはないな」
「シュルスくん冷たい」
ぽて、と彼に体を預けて、メイは小さく息をついた。
でもシュルスは絶対自分を膝の上から下ろそうとはしない。本当は優しい人なんだということをメイはよく理解している。
「雪はすき?」
目を閉じて、彼の鼓動を背中に感じる。
しかしシュルスからの返事はなかった。
上を見ると、優しそうに目を細めて自分に微笑むシュルスがいた。
「すきかもな」
雪は。
それだけ言うと、シュルスはすぐにクールな表情に戻ってしまった。
意外な表情を見せたシュルスの顔が見れなくなってしまい、メイはばくばくする心臓が体越しに伝わっていないか不安になりながら、彼と一緒に雪だるまを見つめる。
その後も楽しく会話をしていたのだが、時折彼が優しい微笑みを向けていたことをメイは知らない。