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ふたりのリヴァイアサン大祭

いくつになってもヘタレっこ・ルゥイ
従順なる翠梟・ホーリア

■リヴァイアサン大祭『夢界』

 大樹の下、愛しい彼女を待つ。小走りに現れたホーリアは、とても美しく、改めて惚れ直してしまう。
 いつもは執事服や男性のような服を着ている彼女は、綺麗なモスグリーンの落ち着いたドレスを着ていて。普段の格好も凛々しいと思うが、俺はこっちの方が好きだ。

「す、すまない。少し仕事が長引いて、着替えていたら遅くなってしまって……」
 息を切らして詫びるホーリアは顔も紅い。この寒さの中、走ってきたのだろう。
「大丈夫だよ。俺も今着いたところだし。……凄く綺麗だ」
 ルゥイは穏やかに微笑み、思わず感想を漏らした。
「あ、有り難う。は、早くリヴァイアサンの丘に行こう」
 ルゥイの言葉に少し頬を染めて礼を言うと、足早に目的地へ歩き出す。照れ隠し故に。
 くすりと軽く笑んだルゥイは、すぐにホーリアに追いついて、ホーリアの手を取る。すると、ホーリアは歩くスピードを落とし、ルゥイの手を握り返した。
(「今日はいつに増して特別なデートだな」)
 握り返された手が嬉しくて、思わず顔がにやけてしまう。
 最初は照れ隠しに周りの景色を見ていたホーリアは、エルフヘイムにかかる橋の上で眼下の景色や夜空に目を奪われた。
(「まるで昔読んだ童話のような景色だ」)
 美しい景色の虜になり、上機嫌で景色を眺める。
「なんだか随分と嬉しそうだな」
 ルゥイは、ホーリアの顔を楽しそうに覗き込んだ。
「って、こ、こら、あんまり覗くな……」
 思わず顔を逸らしたホーリアの横顔は、うっすら紅くなっている。
「っくしゅん。……ん、やっぱり冷えるな」
 ホーリアがくしゃみをすると、ルゥイは自らのマントの留め具を外し、自分とホーリア、二人で一緒に羽織るようにホーリアの肩に掛けた。
 そのまま肩を引き寄せると、ルゥイの肩に頭を預けるホーリア。
「綺麗だな……」
 柔らかい表情のまま、夜空を見上げて呟くルゥイと同じように夜空を見上げ、
「あぁ、本当に素敵な日だな」
 ルゥイの肩の、腕の、一緒に羽織るマントの温もりを感じながらホーリアが呟く。
 その時、ふわりと夜空を優雅に舞う星霊――リヴァイアサンが。
「あれは……!」
 ホーリアの瞳が輝き、同じ方向を見るルゥイの瞳にもリヴァイアサンが映る。
(「ずっと未来でも、こうして穏やかに景色が見られますように」)
 瞳を輝かせながら祈るホーリアの姿に和みつつ、
(「来年も、こうして大切な人と一緒にいられますように……」)
 ルゥイも祈った。

 優しく降り出した雪は、二人を優しく包んで祝福しているようだった。
イラストレーター名:龍司