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ふたりのリヴァイアサン大祭

太刀の魔法剣士・クリストファー
爆裂武侠娘娘・ユウリ

■リヴァイアサン大祭『たまには二人きりで』

 エルフ達がパートナーと共に過ごす、リヴァイアサン大祭の日。
 クリストファーとユウリは街のレストランに来ていた。
「わぁ……リヴァイアサンが見えるわ」
 見晴らしのいい窓際の席からは、街に降る雪と、上空を舞うリヴァイアサンの姿。今日だけの特別な景色が眺められる、この特等席に、ユウリは思わず歓声を上げる。
「すごいですね」
 たまには二人きりで過ごそうと、訪れたレストランで、こんなに素晴らしい景色が楽しめるだなんて。思いがけない幸運だとクリストファーも思う。
「何にいたしましょう?」
 ウェイトレスがグラスと水差しを運んできてオーダーを取る。注文をして、待つことしばし。
(「……何を話したらいい、の、かしら?」)
 改まって向かい合って食事、だなんて。何を話したものやらと沈黙するユウリ。対するクリストファーも、同じような悩みを胸に頬をかく。
 リヴァイアサン大祭だからって、何かが変わるわけじゃない。そのはずなんだけど……なんだか無言で顔を見合わせてしまうと、妙に恥ずかしい感じがしてしまって。ついつい、どちらからともなく赤くなってしまいながら、沈黙と共に、見つめあう。
 ドキドキ、ドキドキ。
 思わず互いの心音が伝わってくるんじゃないか……そう思ってしまうほど。
 きっと短い時間なんだろうけど、とてつも長く感じてしまうほどの時間が過ぎて。
「お待たせしましたー!」
 二人の沈黙を破ったのは、料理を運んできたウェイトレスだった。スープに前菜、肉料理に魚料理、それから主食となるパン。ひとしきり並べ終わってウェイトレスが去って行くと、二人はようやく、どちらからともなく口を開いて。
「……食べましょうか」
「そうね。暖かいうちに」
 いただきます、と声を重ねてスプーンとフォーク、ナイフへと手を伸ばす。
「なんだか凄く贅沢な気分だわ」
 料理を口に運びつつ、ユウリは窓の外の景色を眺める。そこには相変わらず、長い尾を引くようにして、リヴァイアサンが待っている。
 たとえ、何の変哲もない料理だったとしても、年に一度だけしか姿を現さないリヴァイアサンを眺めながらだと特別な物に感じるから不思議だ。
「……ですね」
 その気持ちが分かるような気がして、クリストファーも頷いた。雪が舞っていても、店の仲は暖かい。それは決して、熱々のスープや暖炉の明かりだけが理由ではない、はずだ。

 二人はそれからもゆったりと、皿の中身がすべて無くなるまで、リヴァイアサンを眺めながらのディナーを楽しむのだった。
イラストレーター名:TSUNE