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ふたりのリヴァイアサン大祭

景の宵・クローディア
大丈夫だ問題ない・ヘンリー

■リヴァイアサン大祭『暖かな温もり』

 白銀の世界に飾られたオーナメントが、幻想の世界へと誘う巨大樹の迷宮。
 ゆっくりと舞いながら落ちてくる雪もまた、その世界を一層神秘的なものに感じさせる。
 この巨大樹の迷宮を照らす淡い光は、ヘンリーの持つ黄色のランプ。クローディアの一歩前を歩きながら、その足元を優しく照らす。
 もうすぐ頂上の雪結晶が見えてくる。
「一応高い場所で雪が降っているし……ディア」
「うん?」
 頂上手前で歩みを止めたヘンリーに、クローディアはいつもと変わらない表情で伺う。
「もし危ないようなら……その、手を貸すか?」
 ヘンリーがランプの持っていない左手を差し出す。差し出した手が震えるのは、きっと冷たい雪のせい。
「……ありがとう」
 彼の優しさが素直に嬉しい。頬が赤く染まるのは、きっとランプの光が近くなったせい。
 細く白いクローディアの手を取り、ヘンリーはまた氷の階段を昇り始める。
 可愛く煌びやかな飾りを幾つも通り過ぎ、2人は漸く頂上へ。
 下に広がる雪景色に映える幾多の輝き。雪と氷が織り成す冷たい世界に、確かに感じる暖かな彩。
「綺麗な景色も、貴方と見れた事が何より嬉しくて、幸せ」
 童話の世界を抜けてきたせいだろうか。飾らない言葉がクローディアの胸の奥から溢れ出す。
「私、こんなに自然に笑えるのはヘンリーといる時だけかもしれない」
「俺もお前がいるから笑っていられるよ」
 輝きの世界から視線を移し、ヘンリーは隣にいる暖かな瞳を見つめる。
「お前に伝えたい事が一つ……ディア、好きだ。これからも一緒にいて欲しい」
 決して偽りのない想い。
 今、この想いを伝えなければ――夢の様なお祭りと一緒に、この手が掴んでいる温もりが無くなってしまいそうだから。
 そんな真剣な紫色の瞳を、驚いた赤茶の瞳が見返す。
 クローディアの鼓動は早くなり、幾多の輝きを散らばせた白銀の景色も、紫色の瞳にすべてを奪われる。
「私も、貴方が好き……大好き」
 胸の奥に閉まっていた言葉を搾り出す。一緒にいたい――照れたように微笑み、繋いだ手を握りしめる。
 もうすぐリヴァイアサン大祭も終わり。名残惜しくも消えていく雪の結晶。
 2人はそんな雪の景色を眺めながら、決して消えることのない確かな手の温もりを感じていた。
イラストレーター名:光田まみ