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ふたりのリヴァイアサン大祭

片翼の鵠・クリード
魔鍵のデモニスタ・レモン

■リヴァイアサン大祭『君も寒くないように』

 星霊リヴァイアサンが空を舞う聖なる夜、この丘の上に、ただ一本だけ氷を纏う木がある。
 『氷姫』と呼ばれるその木は、風に枝葉を揺らして鈴のような音色を奏で、人々は色ガラスの洋燈が照らす中、木に色とりどりの羽根を飾る。
 たった独りで立つ氷姫が寂しくないようにと、自分の羽根を差し出した渡り鳥の子――この地に残る、一つの物語になぞらえて。

 憧れの人と過ごせる、夢のような一日。幼いレモンの胸は高鳴り、いつも元気いっぱいな彼女も、さすがに緊張を隠せない。
 レモンが手に持つのは、憧れの人――クリードの瞳によく似た色の青い羽根飾り。手放してしまうのを寂しく思いながらも、自分の手で飾る。
 青い羽根の隣に、会場で配られた羽根を飾って。クリードは、レモンを優しく見つめた。
「君は寒くないかい?」
 レモンの返事を待たずに、そっと小さな手を握る。
 こんな素敵な夜を、レモンと一緒にいられるのが嬉しい。彼女の温もりを掌に感じながら、クリードは氷姫と渡り鳥の子の物語に想いを馳せる。
 旅に出ることが出来なかった渡り鳥の子は、その後どうなったのだろう。ずっと氷姫の傍で幸せに過ごせたのなら良いのだけれど……きっと、そうではないだろうと、彼は思う。
 もし、氷姫が再び独りになってしまうとしたら。それは、とても悲しい物語なのかもしれない。
「クリードさん……?」
 自分を見上げるレモンの瞳に、クリードは微笑みを返す。彼が懐から取り出したのは、彼女の瞳と同じ綺麗な緑色の羽根。
「あの渡り鳥はどうなってしまったのか、わからないけど。ボクはずっと君を傍で温めるよ」
 そう言って、クリードは緑の羽根をレモンの髪に飾る。この羽根は、氷姫を飾るためではなく、レモンのために用意したものだから。
 レモンの頬が、瞬く間に赤く染まる。やっとの思いでクリードさん、と呼んだ声に、可愛い、という彼の声が重なり、ますます照れてしまって。
(「夢みたい……とってもいい日、ずっと忘れないよ……」)
 クリードに寄りかかったレモンの体から、力が抜けていく。普段はとっくに眠っている時間なのに、頑張って眠気に耐えていたのだろう。
 小さな寝息を立て始めたレモンが寒くないようにと、クリードはずっと彼女に寄り添っていた。
イラストレーター名:山咲瓜太