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ふたりのリヴァイアサン大祭

ブルーティッシュエッジ・ジン
しあわせを運ぶ星霊術士・リーファ

■リヴァイアサン大祭『星夜語り〜somnia memorias〜』

 天の星が、雪になって舞い降りてきたような夜だった。
 大きな木の幹に背を預け、赤い髪の少年と、星霊スピカを膝に乗せた少女が並んで座り、同じ時を過ごしている。
 やがて、少年は少女に向けて語り始めた。彼が持つ、遠い過去の記憶を。

 少年がまだ幼い頃。師父に連れられて街から街へ放浪を続けていた時、彼は一人の少女と出会った。星霊スピカを連れた、大きな瞳の女の子に。
「……その子の大きな瞳と、スピカが今でも記憶に残っているんだ」
 少年――ジンは、隣に座るリーファと、彼女の膝の上のサフィーを見てそう言った。サフィーが、丸い目で二人を交互に見上げる。
「わたしもね、昔、ジンくんと同じように、傭兵のお父さんと色んなとこ行ってたんだ」
 もしかしたら。目の前のリーファこそが、かつて彼が出会った少女なのかもしれないと――そう思うジンに、彼女の言葉が続く。
「でも、ジンくんが言ってるくらいの頃のことは……ぼんやりしてて、よく覚えてないの」
 少し申し訳なさそうに言った後、素敵な思い出だと思う、と素直な感想を口にするリーファ。彼女を見るジンの目が、わずかに細められた。
「わたしが初めてサフィを呼び出せたのは――三歳になる前のこと、かな」
 サフィを軽く撫で、リーファは遠い日へと思いを馳せる。ジンがその少女に出会った頃、自分はもうサフィを連れていたはずで。
「だからその子、わたしだったりしてー……なわけないよね」
 冗談めかしたリーファの言葉を、ジンはただの冗談として受け取れなかった。
 二人の間に沈黙が落ち、少年と少女はどちらともなく空を見上げる。
 悠々と、自由に空を飛び回る星霊リヴァイアサン。その姿を見て、いつか立派な星霊術士になるのだと、リーファは決意を新たにする。
 サフィを優しく撫で続けるリーファに、ジンの声が届いた。
「もし、その子がリーファだったら……」
 ようやく口をついて出た一言は、しかし、後が続かなかった。
 少しためらった後、ジンは別の言葉を口にする。
「……今さら、だな。俺は今のリーファが好きだから」
 これも、偽ることのない本当の気持ち。言ってしまった後、ジンは照れたように顔を背ける。
 リーファは一瞬目を丸くした後、微笑んで答えた。
「わたしもジンくんのこと好きだよ。みんなみんな、大切な人だもん」
 あまりに無邪気な言葉に、肩透かしを食らった気分で固まるジン。
「――あれ、違うの?」
 首を傾げるリーファに、ジンはただ苦笑するしかなかった。
イラストレーター名:架神玲那