■リヴァイアサン大祭『2人のリヴァイアサン大祭の夜』
1年に1度のリヴァイアサン大祭の日。この日、水の星霊『リヴァイアサン』が半実体化して空中を飛び回り、空からは雪が舞い落ちる。
外は銀世界。大切な相手と暖かい室内で美味しいものを食べる恋人同士にとっても、『パートナー』との絆を確かめ合って過ごす今日は、特別な日となっていた。
小川に流れる蜜を取ってきてパートナーと一緒に料理を作って一緒に食べる。リヴァイアサン大祭の催しのひとつで作ったケーキを持ち帰ってきたグラディウスは、恋人のシュウと共にソファに腰かけ、甘い菓子と甘いひとときとを楽しんでいた。
「このケーキは美味しいな」
隣を見れば、夢中でフォークを動かすシュウは、本当に美味しそうにケーキを食べているから、祭りで作ったときのことを思い出して、もう一回と思った。
ケーキにばかり夢中になっていないで、自分の方も見て欲しかったから。
忘れられているはずもないけれど、やっぱり二人で食べているのだから。
さくりとフォークでケーキを一口大にして、シュウに差し出してみる。
「大勢の中は恥ずかしいなら、此処なら構わねぇだろ」
「……って、また食べるのか?」
問い返しつつも、シュウはぱくりとそれを口にした。
「はっはっ、やはりこういうシュウも可愛くてええな」
やっぱり美味しい。グラディウスがこんなに料理が上手いなんて。
彼が作ったから、そして彼の手で食べさせてもらうから余計に美味しいのかもしれない。
シュウは口に出さずともそんなふうに思いながら、祭りのときは自分だけ食べさせられたから、お返しすることにした。
「さっきは私だけだったから、今度はグラディウスも食べろ」
と、自分のケーキを一切れ、グラディウスに差し出す。
そうくるか、と少し躊躇した様子のグラディウスだったが、断る理由も無い。それに、シュウがそうしたがるのだから。
「む、俺も食べるのか……? ……仕方ねぇなぁ……」
照れ臭そうだが、まんざらでもない。そんな表情でケーキを頬張る。
「よしよし、良い子だな。ちゃんと美味しいだろ?」
微笑むシュウの瞳は葡萄のような紫色に煌めいていて、見返すグラディウスはもっと彼女の喜ぶ顔が見たくなる。
俺もお返し、と再度ケーキを切ってフォークを差し出す。次は私もお返し、と差し出される。
食べさせ合いが始まって、蜜を含んだケーキの甘さと共に、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていくのがわかった。
あなたと味わうから美味しいの。
あなたと過ごすから幸せなんだ。
そんなふたりの、リヴァイアサン大祭の夜。