■リヴァイアサン大祭『プレゼントに欲しいのは……』
「ふふふ……」それは、リヴァイアサン大祭の夜のこと。
遠い遠いどこかから大昔に伝わってきたという伝承を耳にしたマテラは、それに登場するコスチュームを真似した格好に身を包んで、フェリシティの家の前にいた。
その手には、フェリシティに贈る為のプレゼント。
伝承によると、屋根から相手の部屋に忍び込んで、そっと枕元にプレゼントを残して行くらしい。では早速……と、壁にはしごをかけて屋根を目指すマテラ。
「なにやらスースーするの……」
丈の短いミニスカートを気にして、片手でくいくい引っ張りつつ、もう反対の手ではしごを握ってマテラは一歩、また一歩と登っていく。
「――なんの音だ……?」
深夜、窓の外から聞こえた物音に、フェリシティはピンと意識を張り詰めながら体を起こした。枕元に置いておいた刀を掴む。
目を凝らすと、窓の向こうに何者かの影がある。
(「賊か!?」)
そのまま屋根へ上っていく影の様子を伺うフェリシティ。その影が通り過ぎるのを待ち、そっと音を潜めて窓を開けた。
(「!? なあっ……!?」)
その視界に入ったのは、ブーツとふとももと、赤と白の生地で出来たミニスカートと、それから。……その中身。
(「あっ、あれはっ……!」)
揺れる髪と背中のライン。それは、おそらくマテラに違いない。そう判断したフェリシティは部屋を飛び出すと、そのまま屋根の上へ向かう。
「マテラ、何をしている?」
「ひゃん!? な、なんじゃフェリ、驚かせるでないっ」
結果、マテラが屋根へ辿り着いた時、そこにはダッシュで先回りしたフェリシティの姿があった。驚いて飛び上がるマテラだが、その体を、フェリシティはおもむろに抱きしめる。
「……何をしていたんだ?」
「プ、プレゼントをじゃな……」
用意しておいた袋を見せるマテラだが、フェリシティはそれをつまらなさげに一瞥して。
「ふぅん……だが」
プレゼントよりも、お前が欲しい。
そう囁いてフェリシティは、見上げるマテラの唇に、己の唇を重ねる。
「ひゃ……ん……あ……んっ……」
驚きにマテラの声がうわずるが、唇を離すことも、フェリシティを押しのける事も……離れることも、できない。
重ねられた唇は、何度も何度も貪るように。
その動きのたびにマテラの口から声がこぼれる。
甘い甘い、その声が刺激になって、昂ぶりのあまりマテラに抱きついてキスをしてしまったフェリシティの動きは、弱まるどころか更に深まるばかりで――。
いつしか、崩れ落ちるように、重なり合ったまま屋根の上に座り込む二人。
その間も唇が離れる事は無く、指先が互いに互いを求めて動き合う。
星霊リヴァイアサンの舞う今宵、空からは雪が待っていたけれど、二人は寒さなんてまったく感じない程に熱い、熱い燃えるような夜を過ごした――。