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ふたりのリヴァイアサン大祭

空翔る天馬スカイウォーカー・ディヴァイン
咲謳うアイスバーグ・ノシュアト

■リヴァイアサン大祭『リヴァイアサン大祭〜流氷の煌き〜』

 12月24日、リヴァイアサン大祭――1年に1度、この日だけ、水の星霊『リヴァイアサン』が半実体化して空中を飛び回る。
 すると、エルフヘイムには雪が降り続き、泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れる……星霊の奇跡はそれだけではなく、滅多に見ることが出来ない特別な場所が現れる。
 ディヴァインとノシュアトが旅団『スカイウォーカー』の仲間達と訪れたのは、そんな奇跡の場所の一つ。

 氷の壁の向こう、普段なら見ることの出来ない魚たちの乱舞を背景に、ノシュアトが一つ、二つ、音を爪弾き始め……やがて、それは素敵な音楽となっていった。
 湖の底に響くやわらかな竪琴の音色は、まるで氷上からさしこむ淡い光のように、氷の間を満たす。
 やさしい音色に耳を傾けながら、楽しむ酒は気持ち良い……はずだった。
「チクショウ。周りカップルだらけじゃねーか……俺は涙も誘うシングルすぎて何だか外気の寒さ以上に心がいてついてきたぜ!」
 リヴァイアサン大祭は、パートナーと過ごして互いの絆を再確認し、一緒に世界の平和を祈る。パートナーと一緒に過ごす日に、幻想的な場所に向かうとなれば、カップルの一組や二組、いやそれ以上いても、おかしく無い。
「持ってきた酒もほとんどつきそうなくらい飲んでしまった……。うう、頭がガンガンしてきそうだぜ……」
 そんなディヴァインの酒瓶が空になりそうな頃。
 ノシュアトは、淡やかな余韻を残し演奏を終え、腕に抱いていた薔薇が咲き誇る純白の竪琴を膝の上に置く。
「……はい、お終い。こんな素敵な場所で演奏できて嬉しかったわ」
 親しい、同じ仲間の少年少女を微笑ましく見守り、次いでディヴァインに視線を移すと、何気ない瞬間に視線が重なり……目を丸くした。
「あらん、ディーったら飲みすぎちゃって。ノシュアトちゃんも飲ませて♪」
 ノシュアトのグラスを満ちると、ディヴァインの酒はいよいよ尽きてしまった。
 最も、何本も既に空けている。気にすることは無い、むしろ親しい友のこれ以上の深酒を止めてあげたのだ。
「ね。ディーは流れ星に何かお願いしちゃう? それどころじゃないかしら♪」
 くすくすと悪戯な笑みをこぼしながら、ノシュアトが氷の世界を見上げると、釣られたようにディヴァインもすっかり伏せ気味になっていた顔をあげて、氷の流線をぼうっと見上げる。
「流れ星……そう言われれば、そんな話も聞いていたような」
 氷の向こうを満たす湖水の中で、時折、星が生まれるように真珠色のまあるい氷の塊が生まれ、氷った湖面へと登ってゆく。
 湖を駆け昇る流れ星といったのは、この場所へ連れてきてくれた仲間だったか。
 願い事をすれば叶えてくれそう……とは、空を駆ける流れ星になぞらえて。
 大祭を共に過ごしてくれる親しい仲間がいる――絆を確かめる日に、いいものなのかもしれない。
 ノシュアトと二人、見上げながらただ綺麗だなと思った……頭痛が襲うまでは。
イラストレーター名:pokira