■リヴァイアサン大祭『二人の距離をぐっと縮めたくて…。』
「リヴァイアサン大祭、楽しかったな」旅団の面々とも家族のように絆が深められたようで何よりだ。……そんなことを思いつつカルロが呟けば、ほわほわと「楽しかった……」とプティパが同意を示す。
ひょんなことから二人で話すようになった。個人的に贈り物をするようになった。
プティパの襟元にはカルロが選んだリボンが揺れる。カルロもまた、プティパがくれた羊のぬいぐるみを抱えていた。
……いつの頃からだろうか。
特に意識してたなんてことはなかった――その、はずだったが。
いつの間に、プティパを意識していた。『家族』じゃない、『何か』として。
「せっかくだし、森の雪でも見ながら帰らないか?」
帰り道、それとなくカルロはプティパを誘う。
嬉しそうに笑って頷いた彼女と連れ立って、進んだ。
「カルロさん見て、道も枝も真っ白! 違う森みたい」
静かな森の道でプティパがはしゃいでしまうのは雪のせいだけではなかった。
ずっと、家族のように思ってきたはずなのに……プティパの中で日々大きくなっていく存在――カルロ。
自分の中の初めての感情。彼に対する想い。『言葉』というカタチには、まだできない。ただ、一緒にいられる時間を嬉しく思う。
――不意に。
(「……え」)
プティパは後ろから抱きしめられた。誰か、なんていうのは振り返らずともわかる。
「少し、こうしていてもいいか?」
突然の抱擁に驚いた。けれどその囁きの内容と、まるで心ごと強く温かな腕に包まれた感覚に、嬉しい気持ちが涙と一緒に溢れそうになる。
「……その質問はずるい」
応じた声が震えた。
(「カルロさんの言う『少しだけ』が終わったら……」)
――今度は私から抱きしめさせて。
そう思いながら、瞳を閉じる。
自分自身に「ここにきてまだ、俺もはっきりしねえな」と突っ込みを入れつつ、カルロは腕の中の少女がその場から動かないことにほんの少し、安堵した。
彼女の口から紡がれる、可愛らしい言葉の全てを肯定的に受け止めて……逃がさないように、離さないように、プティパを腕に閉じ込めたまま、カルロもまた瞳を閉じた。