■リヴァイアサン大祭『ハッピー・ホリデイ』
互いの絆を再確認するリヴァイアサン大祭。絆と言う言葉はヴァイスにとって特別だった。
過去に断ち切られた大切な絆。
その辛さを他の者に味あわせたくはない故に、絆を護る戦いを続けているからこそで、そんなヴァイス自身も、新たな絆を築きつつあった。
今日共に過ごしているフェリスも、その新たな絆の一つ。
フェリスはヴァイスの営む食堂に身を寄せる団員の一人で、ヴァイスを「てんちょー」と呼んで慕ってくれている。
リヴァイアサンが空を飛び、小川には甘い蜜が流れ、街中が楽しい雰囲気に包まれ、多少の悪戯も許されるなんて、嬉しい限りだ。
フェリスは思う。
祭りだけあって遊べるし、何より、てんちょーが嬉しそうなのが良い。
(「絆なんて難しいもん、私ぁ全然わかんねーし知らねぇけど……」)
それでも、ヴァイスが絆をとても大事にしているのは知っているから、彼はきっと、それを確認するのが嬉しいのではないか。
彼が嬉しいなら、それが私にとっても一番嬉しい。
(「だから、てんちょーが笑ってる今日は最高のお祭りっスね!」)
実際、フェリスのその考えは概ね的を射ていた。
新たに築いた絆、それを護るためならばヴァイスはいくら汚れても構わないとすら思っていた。
そして、いくらでも強くなると誓うのは、こうして改めて絆の大切さを実感するから。
ふたりで歩くリヴァイアサン大祭の夜、祝福するかのようにふわりふわりと白い雪が舞い落ちてきた。
「てんちょー、雪っスよ雪!私初めて見やした、すげえ綺麗っスねぇ……!」
「はしゃぎ過ぎるなよ。転んだら大変だぞ、フェリス」
無邪気にはしゃぐフェリスを見るにつけ思うのは、団員達だけでなく彼女からもらった多くの癒し。
だから、自分の関わる全てのひとに無条件に幸せになってほしい。
それは贅沢だろうか?
「てんちょーは私らが嬉しいのが一番嬉しいんだって言うけど、私もてんちょーが嬉しいのが一番嬉しいんス」
嬉しい気持ち。
大切な気持ち。
互いを想う気持ちはこんなにも幸せを感じさせてくれる。
それを丸ごと抱きしめるかのように腕を天に向かって広げて、次から次へと降ってくる雪を抱きとめるような仕草。
「キズナってのがてんちょーの嬉しい気持に繋がってんなら、私もてんちょーとのキズナってのを大事にしたいっス!」
フェリスの言葉は、真っ直ぐにヴァイスの心に染み渡るのだった。