■リヴァイアサン大祭『二人だけの飲み会』
エルフ達が絆を深める、リヴァイアサン大祭。『水の星霊リヴァイアサン』が半実体化して上空を飛び回り、雪が降り続く日。
泉は温泉に変わり、小川には甘い蜜が流れる。
この幻想的な夜、エンドブレイカー達も仲間や友人と更に絆を深めようと誓った者も、多かった。
ヨヘールアイゼとノンカもその一組だった。
エンドブレイカー同士として知り合って、こうして絆を深めるべく今日という日を二人で過ごす。
とても贅沢なことだった。
二人はエルフヘイムで指折りのレストランですることにしたが、あまりに格式ばっていて、正直飲んだ気がしなかった。
だから、ノンカは軽い調子で言ったのだ。
「飲んだ気がしないのぉ。わしの部屋へ来るかえ?」
「え? いいのかい?」
面食らったのは、ヨヘールアイゼの方だ。
今日、パートナーとして一緒に過ごしている。
だけれどノンカも美しい女性だ。
男性をすんなり、部屋に招き入れるとは想像もしていなかった。
二つ返事でヨーヘルアイゼは、ノンカの後をついて彼女の部屋にお邪魔した。
部屋に入りながら、ヨーヘルアイゼはノンカに告げる。
「いや、すまなかったね。オレは、どうもああいう雰囲気だと落ち着かなくて、酒も美味く感じられないよ」
それを聞くと、ノンカは微笑を浮かべて。
「ワシもだよ。豪華な食事は嫌いじゃないが、酒は自宅の方がすすむからのぉ」
そう言って、キッチンに置いてあった、ワイングラスと貴重な日にしか開けないと決めていた、とっておきのワインを持って、ヨーヘルアイゼの座っている、ノンカのベッドまで持っていく。
「ほら、グラスじゃ。飲みなおそうぞ」
「ありがとう、ノンカ」
軽い頬笑みでグラスを受け取るヨーヘルアイゼ。
「ワシが酌をしてやろう。折角のリヴァイアサン大祭じゃからな」
「美人さんに酒を注いでもらうなんてオレは心底幸せ者だ」
そしてヨーヘルアイゼがノンカのグラスにワインを注ぎ返す。
「ありがとう。それでは、今一度乾杯」
ノンカが言い、二人のグラスがかちゃんと音を立てる。
格式ばったレストランより、ノンカの部屋の方が酒がすすんだ。
弾む会話。
ほんのり赤くなる頬。
そんな時、ヨーヘルアイゼが、ノンカの瞳をじっと見て言った。
「今日はおっちゃんと過ごしてよかったか?」
真摯な瞳。
それを受けながらも、ノンカは静かに頬笑みを浮かべるだけ。
ヨーヘルアイゼはその反応を見て一人合点した。
「嫌なら二人で飲まないか」
そしてにっこりと笑う。
そして。
夜もふけて、二人の酒のペースも落ちてくる頃、すっかり酔っ払ったヨーヘルアイゼが突然、ノンカに飛びつき押し倒そうとした。
なんて破廉恥!
勿論そんなこと簡単に上手く行く訳は無く。
ノンカの鉄拳制裁で吹っ飛ばされるヨーヘルアイゼ。
「まだはやかたかと」
天井を仰ぎみれば、ペットの白鼠ソノーチがいたとか。
ノンカは、そんなのほっといて飲みなおしていた。