■リヴァイアサン大祭『甘い香りに誘われて』
リヴァイアサン大祭。それは1年に1度の大切な日。パートナーとの絆を確かめ合う大切な日でもある。そんな日のハニーバザールを歩く2人の男女の姿があった。
「ハニーバザール、こんなにも沢山のお菓子や蜂蜜があるとは思っていませんでした」
チロがヴァルムへと興奮した声で告げる。
「そうだね。いろんなお菓子を俺も作れるようになったけど……世界には、俺の知らないお菓子ってまだまだたくさんあるんだね」
周囲に溢れる様々なお菓子に目を奪われる2人。
よく見かけるキャンディーやクッキーも様々な種類がある。そして手の込んだケーキに焼き菓子もあった。
珍しいものでは蜂蜜のムースや蜂蜜のシュークリーム、東方から伝わったと思われる鮮やかな季節の菓子なども見ることができた。
「わぁ……私こんなお菓子、初めて見ましたっ! それにとっても美味しいです!!」
見た目も味も両方が素敵なお菓子。試食で食べてすっかり魅了されてしまった。できればまた味わいたいなとほわほわしてしまう。
「味を覚えたら再現できるでしょうか……」
「どうだろう。でもウチでもしたいよね……」
そのまま2人一緒に、じーっと作る様子を見てお店の人を困らせちゃったりもした。
そして一通り歩いて楽しんだ2人は笑顔で共に歩いていた。ヴァルムはお菓子がたくさん詰まった袋を抱えている。
「どれも美味しいからたくさん買っちゃったね」
「本当に……。あの、でもそんなに食べられるんですか……?」
旅団の人たちへのお土産もあるだろけど、沢山だなと見ているチロ。
「あ、もちろん一人で食べるわけじゃないよ?」
そう言うと袋に手を入れて、何かを探すヴァルム。
そして中から一つの包みを取り出してチロへと差し出した。
「今日一緒に来てくれたお礼だよ」
「えっ、い、いいんでしょうか…!?」
チロが受け取って見ると、それは蜂蜜が練り込まれたマフィンだった。
「うん、受け取ってよ。楽しいひと時のお礼だよ!」
「わーわーっ、大事にしますっ! ……あ。だ、大事に食べますっ!」
間違っちゃいました、と真っ赤になって言い直すチロ。
そしてヴァルムはそんなチロを楽しげに見ている。
「今日はありがとねチロ。とっても楽しめたよ。甘いお菓子がたくさん並んでいるって聞いたら、来なきゃいけない気がしたんだよね、チロと一緒に」
それにチロは少しだけ照れくさそうに答える。
「私も楽しかったです。……それに今日はヴァルさんも一緒でしたから」
甘い香りに誘われ訪れたこの場所。甘い香りと共に大切な思い出が刻まれる。
甘く美味しいお菓子と、2人で共に訪れた思い出が2人のお土産となったのだった。