■リヴァイアサン大祭『リヴァイアサンの舞う夜に』
今日はリヴァイアサン大祭。エルフたちはパートナーと互いの絆を再確認するのだという。水の星霊リヴァイアサンが半実体化している空の下で、銀色の長い髪を垂らした青い目の少女が佇んでいた。「フィオ、お待たせ」
「わたしも、今来たところ、ですよー」
フィオリスの待ち人もまた、青い目と銀色の髪を持っていたが、彼女は髪のサイドを編み込んでいる。共通点の多い彼女たちであったが、二人は更に今日は示し合わせてのお揃いの洋服を身にまとっていた。黒くて大きなリボンや白のフリル、黒いレースなどがふんわりと愛らしい。
「じゃあ、まずはプレゼント交換からかしら?」
リィナがそう言えば、フィオリスは早速大事に持っていた彼女へのプレゼントを差し出す。応じて、リィナもフィオリスにプレゼントを手渡した。
「せぇの、で、いっしょに開けましょ」
フィオリスの提案で二人同時にそれぞれの贈り物の封をといた。
リィナが手にするのは、二匹の猫が寄り添うモチーフのついた銀色の腕輪。
フィオリスが手にするのは、月でくつろぐ二匹の猫のペンダントだ。
満面の笑顔で二人ともが互いにお礼を言いあいながら、その場で身につける。
「よく、似合ってますよ、リィナ」
「フィオもね。わたしの見立ては間違ってなかったわ」
互いにほめあったあとは、長いマフラーを一緒に巻いて、祭りで賑やかな街へと繰り出すのだった。
手をつないでお祭を一緒に楽しむ二人は、お土産によさそうなお菓子を見つけるたびに、お店をはしごしていた。あれこれ目移りしつつ、彼女たちの荷物は確実にお菓子で満ち溢れて行く。
「あ、これも、おいしそうね」
とフィオリスが言えば、図ったかのようなタイミングで、リィナのお腹がぐぅ〜、と鳴った。ちょっと恥ずかしそうに目線をそらすリィナに、フィオリスはちょっぴりいたずらっぽさを含ませて笑いかける。
「今……こっそり、食べちゃいましょうか」
「……大丈夫かしら?」
「いっぱい買うから、すこしくらい大丈夫、ですよ」
こっそりつまみ食いしちゃったのは、二人だけの秘密。
お土産もたくさん買って、二人は空のリヴァイアサンを見上げながら、お店への帰途についていた。
「フィオ、大好き」
ぽつりと唐突に呟かれた言葉に、フィオリスは空を見上げたまま。
「……わたしも、大好き……ですよ」
その呟きをうまく聞き取れず、リィナが「え?」とフィオリスを見やったが、
「ん、何でもない、ですよ」
照れ隠しにフィオリスはごまかしてしまうのだった。
これが、彼女たちのリヴァイアサン大祭。