■リヴァイアサン大祭『とある優しい時間』
リヴァイアサン大祭は特別な日であり、多くのイベントが催されている。人によっては複数の場所に顔を出すこともあるだろう。場合によっては、祭りの為に休憩を取る人たちもいる。この特別な日を精一杯楽しむには、そういう休憩も楽しく過ごすことが肝心なのかもしれない。
そして、祭りの為に食事をしておこうということでカフェテラスに入るアレクセイとルゥも、この大祭を楽しむひと組だった。
「それにしても、やっぱり今日はそこいらじゅうお祭り色だな」
カフェテラスから見る街並みは普段より明るい色をしていた。日も暮れているが、それでも人波が切れることはない。少し見るだけでも大祭の為の装飾が目に付く。
道行く人たちの顔は明るくて、見ているだけ楽しい空気が伝わってくるようだった。
「本当だね。やっぱり、こういうの楽しくて好きだよ」
せっかくのお祭りなのだ。こういう空気こそ祭りならではという気がする。
「あ、ホットココアとショートケーキください!」
近くを通ったウェイトレスに注文する。甘いのが大好きなルゥは自分好みの組み合わせで注文する。
「それじゃあ俺は……チョコレートケーキにシャンパンをくれ」
「お酒好きはわかるけど、甘いものとお酒って合うのかな?」
お酒好きなアレクセイの注文に疑問を挟むも、そこは人それぞれである。
注文を待つ間も2人はこの後の祭りについてや、リヴァイアサン大祭の街の空気。それに最近の面白かったことなどを語り合う。とにかく、この空気の中では何をしてていても楽しくて仕方がない。
そして丁度話が途切れた時を狙ったかのように注文したものが届く。
届いたケーキを見てとてもうれしそうに笑みを深くするルゥ。さっそくフォークを握り自分のケーキを頬張り始める。
「んぅ〜、おいしい♪」
とても満足そうに食べる姿に、アレクセイもつられて笑みを深くする。
「あーくんのケーキも、おいしそうだね!」
自身のケーキに集中していたルゥだったが、不意にぴこんとツインテールを揺らしてアレクセイのケーキをロックオンした。
「……欲しいんか?」
「うん!」
遠慮なく元気に頷くルゥに苦笑しつつ、フォークでさくりと切り取ってひょいと口へと運んでやる。
「えへへへ。おいしい」
「ん? まだ喰うか?」
頷くルゥ。
さくり、ひょい。
ぱく、えへへ。
さくり、ひょい。
ぱく、えへへ。
そしてその繰り返し。気付けばアレクセイが一口食べたケーキは全部ルゥの口の中に消えていた。
全部食べられてしまったアレクセイだったが、美味しそうに食べるルゥを見る笑みはとても満足そうなものだった。
祭りまでの少しの時間。それはとても優しく穏やかなものとなったのだった。