■リヴァイアサン大祭『繋いだ手は、いつまでも』
「うわぁー! ヴィヴィねぇすごいよ! ちょーでかいよ!」冷たい雪の降りしきる夜の丘に、一人の少年の興奮した声がこだました。
声の主であるラスターが指さす先にあるのは、夜の闇を横切る一筋の大きな青白い光。星霊リヴァイアサンが半実体化した姿だ。
「ま、待ってください」
うきうきとはしゃぎながら、リヴァイアサンの丘の頂上へと続く道を駆けあがっていくラスターに手をひかれ、ヴィヴィねぇと呼ばれた少女――ヴィースはなんとかその後をついて歩く。ラスターがしっかりと握りしめたままの左手の暖かさに彼女の胸はどきどきと高鳴り、足元もおぼつかない。
何度かつまづきそうになりながらも、頬を撫でる雪の冷たさにくすぐられヴィースは顔を上げる。
丘の頂上はもう、すぐそこまで迫っていた。
「……すごい。ほんと……大きくて……きれいです……」
より近くに見えてきたリヴァイアサンの大きさと美しさに圧倒され、ヴィースは思わず言葉を失った。その光景に見とれて気もそぞろな彼女の手をひき、ラスターは一番景色のいい場所へと連れていく。
天を仰げば、空いっぱいに広がる上位星霊の雄大な姿。ラスターも興奮冷めやらぬ、といった様子で満面の笑みを浮かべていた。
「ホント、すっごいキレイだねー……さ、ヴィヴィねぇお願いしよ!」
「あ、そ、そうですね……」
二人はしっかりと手を握り合い、寄り添いながら遥か空を舞うリヴァイアサンに向かって祈りを捧げる。
二人の絆が永遠に続きますように。
ずっと二人で一緒に居られますようにと、目を閉じて深く祈る。
繋がった想いを確かめるかのように、ヴィースは時折ラスターの手をぎゅっと握りしめた。その感覚に気付いたのか、ラスターは少し照れたような笑顔を浮かべ、ぽつりとこうつぶやく。
「これからの一年がボクらにとって、今夜の星空のように輝いたものでありますように……」
応じるように口を開きかけたヴィースの手を、今度はラスターが握り返した。
(「ずっと傍にいるからね」)
いつになく恥ずかしそうな調子で、どこからともなく内に響いてくるラスターの声。それは繋いだ手から伝わるマインドによって投げられた言葉だった。
思わぬ不意打ちを受けたヴィースはみるみるうちに顔を真っ赤にし、言おうとしたこともうまく出てこない様子だ。
「……ぁ、ゃ、ぇと……私も……ずっと傍にいて……放しませんから……」
迷いながらようやく出てきたその言葉も、なんだか気恥ずかしくてだんだんと小声になる。
面と向かってなんてとても言えなくて、ついうつむいてしまう。
けれど精一杯のいとしさを込めて、ヴィースはラスターの手を強く握り返すと、ぴったりとそばに密着した。
繋いだ手の温もりがいつまでも続くように、寄り添う二人の願いと共に祭りの夜は静かにふけていく。