■リヴァイアサン大祭『繋がる心 〜光り輝く雪の中で〜』
リヴァイアサン大祭の夜、その道は幻想的な光景に生まれ変わった。降り積もった雪が数々の雪像のようになり、道の両端に立ち並んでいる。夜には雪像の中に青や赤など色とりどりの灯りが入れられ、その光が雪の道を七色に染め上げた。
今宵、ルシリュとイヴリンも七色に輝く道を歩いていた。
その周囲では、何組もの恋人達がこの光景を楽しんでいる。
(「自分たちもあんな関係になれたらいいな……」)
そんなことを考えるイヴリン。でもすべての仲間を大切にするルシリュに、自分だけ多くを望みすぎるのは贅沢だとも思う。
しかし一方のルシリュも、ある決意を胸にこの日を迎えた。
「(もしお付き合いできるんだったら将来結婚してもらえるくらい、いっぱいいっぱい大事に……)」
秘めた想いを告げるなら、今日しかないと思っていた。
やがて道も半ばに差し掛かった頃。
ルシリュはイヴリンと向き合い、彼女の目をじっと見つめる。
「……え、えっと……イヴリンさん」
「……はい?」
この日のために、何十回、何百回と頭の中で練習してきた。準備は完璧……の、はずだった。
しかしいま、ルシリュの頭の中は真っ白になっている。もう、こうなったら行くしかない。
「好きですっ!! 僕と……結婚して下さい!!」
「は、はいっ!!」
突然の告白に驚くリヴリン。
でも咄嗟に返した返事は、偽らざる自分の気持ちだった。
「うっ……わ……本当に? イヴリンさん、大好きです!」
ルシリュは嬉しさのあまり、彼女を強く抱きしめる。
しかしここで、お互いが重大な事実に気付いた。
(「……あれ? 僕……今……プロポーズまでしたっ!?」)
(「あ、あれっ、わたし今プロポーズされた???」)
告白の言葉を思い出し、ルシリュは恥ずかしさのあまり耳まで赤くなっている。
イヴリンも、ドキドキと嬉しさで胸が一杯になっていた。
(「なんだか色々さわやかにぶっ飛ばした気がするけど……こんなのもありなのかも……」)
自分の手をとるルシリュの手を、イヴリンは少し恥ずかしそうに両手で包みこんだ。
「そうだこれ!」
思い出したかのように、手編みの薄紫色のマフラーを取り出すルシリュ。
「わたしからも、これを」
イヴリンのプレゼントは、縁に銀の糸で星霊リヴァイアサンの姿を丁寧に刺繍した、白い皮製の手袋だった。
ルシリュは手袋を身に付け、イヴリンの肩に優しくマフラーをかける。
イヴリンはマフラーをかけるルシリュの手に、自分の手をそっと重ね合わせた。
(「ああ……なんて幸せなんだろう」)
ルシリュは、イヴリンの温もりを感じながら何度もそう思う。
色とりどりの明かりに照らされて輝く美しい雪の中、この幸せがずっと続く事を強く願うルシリュとイヴリンだった。