ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

灰色の箱庭・アムロック
シーアンカー・ミズン

■リヴァイアサン大祭『ちょっとした幸せ』

「良かったら食事でもどうだい?」
 リヴァイアサン大祭の日の出来事である。アムロックはミズンを呼びとめるとそんな提案をした。いつもお世話になっている礼に、たまには歳の若い友人を食事に誘うのも悪くはない。食事へと誘われたミズンは喜んでその申し出を受けると、共に食事処へと足を運んだ。
 店は祭日という事もあり混んではいたが、アムロックが事前に連絡を入れていたのだろうか、すぐに席へと座れた。しばらくしてリヴァイアサン大祭を祝う豪華な料理が次々と運ばれて来た。目の前に並んだご馳走にミズンは目を輝かせ喜んだが、ここは誘われた手前、ちょっと遠慮した方がいいのだろうかとためらいを感じてしまう。
「ほら、沢山お食べ。美味しいよ」
 ミズンの様子に気がついたのか、この為に誘ったのだからと食事を促すアムロック。
「うん、いただきます!」
 その後押しに安心して、ミズンは笑顔で料理を食べ始める。
「料理の味はどうだい?」
「とっても美味しいよ!」
「そう、よかった」
 ミズンが本当に美味しそうに料理を頬張る姿を見て、満足そうにアムロックは手元の紅茶へと口を付けた。美味しい料理に舌鼓を打つ中、ミズンはチラリとアムロックを見やる。彼女はいつも冷静であり、姉のような存在であり、ミズンの憧れの人であった。
(「ボクもああなれたらなあ……」)
 優雅に紅茶を飲む彼女の姿に見とれてしまう。自分も彼女のような人間になれたらとクールな自分を空想した、その時だ。
「やっぱり、ミズン君の笑顔には癒されるね」
 思っていた事を見透かされたようなその台詞に思わず赤面してしまう。
「そ、そうかなあ」
 冷静を装い、あはは、と笑って頬をかく。
(「やっぱり、ボクはボクらしく、元気にしてた方がいいのかな?」)
 思いなおした所で、ミズンは照れながらも話題を変える。
「え、えっと、そうだ! この間、旅の途中にすごい料理と出会ったんだ」
 ミズンは旅先で見た、手の込んだ菓子類や豪快な海鮮料理などについて語った。それは確かにこの辺では見かけない料理で、想像するだけでも大変愉快であった。
「こんな食べ物があってね」
「ほぅ、興味深いな」
 アムロックは彼女の料理話に聞き入りながら、楽しそうに相槌をうつ。楽しい、楽しい食事の時間。2人のちょっとした幸せであった。
イラストレーター名:martha