■リヴァイアサン大祭『 あまいもの と あまいもの 』
色とりどりのランプイルミネーション。はらはらと舞い散る雪は今宵、全てを優しく包み――。
優しく降り積もる雪のように白く、可愛らしい苺を乗せたショートケーキ。まるで、カフェテラスでショートケーキを食べる白い髪に赤い瞳の可愛らしい少女のようでもあり。
フォークが少しずつ、ショートケーキのようなシキの可愛らしい口に運んでいく。
「美味しい♪」
「良かった」
幸せそうな笑顔を浮かべて口と手を動かすシキを見るキーストアの表情も楽しそうだ。
キーストアの手元には、ティーカップから湯気と紅茶の香りを立ち上らせている。
少しだけ頬を染めたシキが、
「あーん」
フォークに一口分のショートケーキを乗せて、キーストアに差し出した。
「……。あーん」
少し目を見開いて、すぐに嬉しそうに口を開けるキーストア。
その開いたキーストアの口に食べさせようと、シキが精一杯腕を伸ばす。
どうしても身長差があるから頭の位置も全然違い、シキは簡単に食べさせてあげられないのだが、
――ぱく。
そこはキーストアが少し屈んであげればいいだけの話で。
「うん。美味い」
美味しそうに口を動かすキーストアを見て、シキも嬉しくなる。
「ね? 美味しいでしょう?」
ちょっと得意げに、にこにこと笑顔を広げた。
その時、すっとキーストアの腕が伸び、シキの口端を親指で軽く拭う。
「?」
きょとんとするシキ。
キーストアはシキの口端を拭った親指をぺろりと舐め、
「甘い」
くすりと楽しそうに微笑んだ。
「え、やだ! 恥ずかしい!」
自分の口の周りに生クリームがついていたのだと分かったシキは顔を赤くして、テーブルに備え付けてあるペーパーナプキンで口の周りを拭く。
その様子をくすくす楽しそうに見守るキーストアの眼差しはなんと優しげなことか。
白い髪に赤い瞳。苺のショートケーキのような少女は本当に甘かった。
年に1度だけリヴァイアサンが空を舞うこの日は、祝福の雪が優しく降り続き、優しく甘い時間がゆっくり流れた。