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ふたりのリヴァイアサン大祭

蒼陽の獅士・エクサ
扇の魔曲使い・ヴィーネ

■リヴァイアサン大祭『2人で過ごす素敵な聖夜』

 月明かりと星灯り。
 冬の夜空を彩る彼らでも、この日ばかりは主役にはなれない。
「……綺麗」
「本当に、その通りでござるな」
 白く浮かぶ闇に流れ行くのは、確かな威厳と神秘に満ちた星霊リヴァイアサン。年に一度、この日にだけ姿を見せる上位星霊は、一夜限りの贈り物を運んでくる。降り続く雪の冷たさが、どれだけの人の心を温めてくれることか……。
「では、参ろうか」
 エクサが屈んで差し出した手を、ヴィーネはそっと握り返した。触れた瞬間、その冷たさに少し驚いたけれど、すぐにお互いの温もりで凍える風すらも気にならなくなる。
 2人が進むのは、木々の合間に輝きの浮かぶ奇跡の森。大祭の日になると光を灯すこの森では、嘘か真か妖精の祝福を授かることができるのだとか。そんな伝説を想いつつ、彼らは思い出のランタンを手に美しい景色の中を歩いてゆく。
「エクサさん、あそこ!」
 ほら、今ちょうどリヴァイアサンが通った……と彼女が示す先には、木々の隙間から覗く一際美しい大樹があった。夜空を押し上げるその樹には、白い雪に覆われてなおも深緑の葉が茂る。人々の笑顔と眩い装飾に包まれた暖かい眩しさに、エクサは思わず目を細めた。
「ああ、本当に綺麗だ」
 しばし、2人は並ばない肩を並べて景色を楽しんだ。
「あそこにいる人たちも、この森を見てやっぱり同じことを言うのかしら?」
「間違いなくそうでござろうな」
「あら、自信があるのね」
 楽しげに聞き返すヴィーネに、エクサはまたもや得心顔で答えた。
「無論。なんと言っても、ここにはヴィーネちゃんがいるでござる」
「……もう」
 ぺち。
 可愛い平手がエクサの頬を叩いた。
 やがて森を抜け、煌めきを抱いた樹の根元までやってくると、エクサは用意しておいた小包を取り出した。伝説にあやかって、この場所でプレゼント交換をする約束をしていたのだ。
「ヴィーネちゃん、これを受け取ってほしいでござる」
「……ありがとう」
 少し照れた様子の彼女がたまらなく愛しい。2人は光溢れる闇の中、見つめ合った。
「……」
「……」
 そして訪れる沈黙。
「ヴィ――?」
「ごめんなさいっ」
「!?」
 小柄な彼女が突然抱きついてきた。
「実は、プレゼント、忘れてきちゃったみたいなの……」
 真底申し訳なさそうにそう告げる。
「本当に、ごめんなさい」
「大丈夫、気にしないでござるよ。妖精に邪魔されずに済んだと思えばむしろ良かったでござる」
 それに、とエクサは胸中で呟いた。
 この瞬間こそが最高のプレゼントなのだから。

「どう?」
「ばっちりでござる!拙者の目に狂いはなかったでござる!」
 帰り道、ヴィーネは贈り物のピアスを早速試していた。
「本当? ずっと大事にするわ」
 そう言って、代わりに外した装飾をしまおうと彼女が鞄を覗きこむと。
 そこにはリボンで包装された小さな小箱が、奥の方で申し訳なさそうに収まっていた。
イラストレーター名:桐嶋たすく