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ふたりのリヴァイアサン大祭

黒真珠の欠片・カルロ
たった一人の為の騎士・メニメ

■リヴァイアサン大祭『雪兎と小さなぬくもり』

 しんしんと降り続く雪の中で、カルロは一心不乱に雪ウサギを作っていた。
 両手で雪をかき集め、固める。丸い体を作り、長い耳をつける。でこぼこを削って形を整える。足りない部分には、再びかき集めた雪を足す。
 あまりに集中しているので、メニメは声をかけることを躊躇っていた。本当はさっきから、真っ赤になっているカルロの手が気になって仕方がない。小さな手に、手袋をはめてあげたいのだけれど。
 指先で熱心に形を整えて、カルロは最後に、慎重な手つきで目の部分に赤い石をはめた。真っ白だったウサギがぱっちりと赤い瞳を開く。まるで命が吹き込まれたかのよう。
「……出来た」
 ぽつりと呟くと、作業を見守っていたメニメはぱちぱちと拍手をした。
「お疲れ様でした。かわいいウサギですね」
「……うん……頑張った、から」
「まるで生きているみたい」
 メニメは優しい表情で、ウサギの顔を覗きこむ。雪の上に座り込んだ小さなウサギは、赤い愛くるしい瞳でメニメを見上げている。
「で、カロ君」
「うん?」
「手が真っ赤です」
 メニメは冷たくなったカルロの手を取り、両手で包みこんだ。突然のことにカルロは、目をぱちぱちさせ、わたわたと慌てた様子を見せた。
「しもやけになったら大変ですよ?」
 ずっと雪を触っていたカルロの手は、小さな白いウサギと同じくらい冷たい。メニメは赤くなったその手に血が通うように、ゆっくりと優しくさすった。
「……うん」
 カルロは少し赤くなりながらも、大人しくされるがままになっていた。かじかんでいた指先の感覚が、徐々に戻っていく。なんとなく気恥ずかしくて、カルロはメニメの口のあたりを見た。唇から漏れる息は白い。包み込まれた指先が温かい。
 不意に手が離れ、メニメは立ちあがった。
「さ、そろそろ戻りましょうか」
「……戻るの?」
「風邪をひいてしまいますよ」
「……う、うん」
 カルロは立ちあがり、後ろ髪を引かれる思いで白い雪ウサギを振り返った。メニメはそんなカルロの手を取り、ぎゅっと握る。
 カルロが顔を上げると、メニメはにっこりと微笑んだ。カルロの頬にも、わずかに笑みが浮かぶ。
 そうして二人は並んで手を繋ぎ、その場を後にした。冷えた体を癒してくれる、暖かな家に帰るために。
イラストレーター名:笹井サキ