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ふたりのリヴァイアサン大祭

遠き傷痕の記憶・ジェーン
紅蓮鳳蝶・シャホン

■リヴァイアサン大祭『大切な時間』

「今日は大祭だし、一緒に行きたい所があるの。ついて来てくれないかな?」
 ジェーンのお願いにシャホンはニコリと笑った。
「うん、ジェーンの誘いなら喜んで」
 シャホンの答えにジェーンもまた笑みを浮かべる。
 手を差し出したジェーンの誘いに、シャホンは指先を重ねる。二人で、歩き出した。

 ジェーンがシャホンと連れ立って来たのは、街を見下ろせる小高い丘だった。
 賑やかで華やかな大祭一色の街の様子が見渡せる。
 闇に浮かぶ光はとてもきれいで、ジェーンもシャホンもどちらからともなく感嘆の息を漏らした。
 街は賑やかで華やかで……でもここは静かで、二人きりで、自然と寄り添った。
「きれいね」
「うん。……静かだね」
 そう言ったシャホンをジェーンは抱きしめる。
 抱きしめられたシャホンはジェーンに体を預けた。広がっていく体温に、安堵の思いも広がるような気がする。
「二人きり、ね」
 言いながらジェーンはシャホンに微笑んだ。
 ジェーンに抱かれ、シャホンもまた幸せそうに微笑み返す。
「こうして二人で一緒に居られて、とっても幸せ……」
 ジェーンは小さな声で呟いた。
 ――こうやって二人だけで過ごせる大切な時間。
 目を閉じると感じられる、腕の中のシャホンの存在。
(「このまま時が止まってしまえばいいのに」)
 そう思えてしまうほどの幸福と、一抹の切なさのようなものと。
「これからもずっと一緒に居ようね」
 ジェーンは焦がれるように……願うように、囁く。
 その囁きにシャホンはジェーンに柔らかく頬ずりをした。
「……ジェーンと出会えてよかった」
 ジェーンの腕に包まれてるだけで、シャホンはこれ以上ないほどの幸せを感じる。
 体温に安堵し、言葉に充足感のようなもの広がる。
 一緒にいられるだけで幸せだと、心から思う。
(「なんだろう、こんな気持ちになったのは本当初めて」)
「私、こんなに幸せな気持ちになったの初めてだったんだ……」
 ……ジェーンとずっと一緒にいたい。
 改めて、思う。
 ――ジェーンとの『永遠』を願う。
「これからもずっと一緒だよ」
 シャホンはジェーンの囁きに応じた。
イラストレーター名:澤村 一彰