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ふたりのリヴァイアサン大祭

星蝕・ロットバルト
夢見る暴力・フィグ

■リヴァイアサン大祭『星に願いを』

 リヴァイアサン大祭は1年に1度の特別な日。この日は普段とは違った特別な光景を目の当たりにすることができる。小さな変化もあれば、目を疑うような変化もあり、人々を楽しませる。
 そしてこの淡水湖も普段とは違う一面を持つ。一面が氷に覆われ、氷のドームが生まれる。そしてドームに降りたのならその美しさに感嘆せざるをえない。そして、それはロットバルトとフィグも例外ではなかった。
 見上げる湖中には、泳ぐ魚たちと、真珠色の丸い氷の塊がぷかりと昇り、氷の粒を纏い銀に光る藻が並び、きらきらと動く星空のように見える。
 目を奪われていたが、ふと冷気を感じた。氷のドームなのだから冷えるのは当然だが一瞬とはいえそれを忘却する程の美しさだったのだ。
「で、お前は何をしている」
 ロットバルトが眉を顰めつつ自信の従者を見る。フィグは手を広げてじっと主を見ている。寒さを感じたことを、見ていれば気付けないわけがない。従者は己が主の事を理解しなくてはいけない。
 そして、何よりも主と在るのが幸いなのだ。それはこの勝景に負けることない価値観だった。
「……お前が寒いというのなら仕方がない」
 顔を一度は背けたが思い直してフィグを受け入れる。コートに飛び込んできたその身は確かに暖かくて、感じた寒さを和らげていく。
 フィグもぎゅっとしがみ付き、その身を擦り寄せる。その顔は至福の笑顔で一杯になっていた。
 ロットバルトが再びドームを見上げると、景色が変わったように感じた。
「嗚呼この場所は儚いまでに美しすぎて、見詰め続けると溺れてしまいそうだ……」
 つい口から零れた言葉。自身でその言葉に哂いを漏らし、何を言っているのかと苦笑を浮かべる。
「空気が要るなら、引き摺り上げて差し上げる。……如何?」
 主が漏らした言葉をフィグは聞き洩らさなかった。溺れるなら離れることなく引き摺り上げるのだと。
 だがそれにロットバルトは皮肉気に……しかし、それ以上に真剣な声音でそれに返答する。
「従者なら……付き従うなら、一緒に沈んで来い。そういうものだろう?」
「……そうね、何処へだろうと何処までも、アナタの往くところへ。供として沈みましょう」
 けして離れない。主の進む場所ならば何処までも。たとえ何があってもその在りようは変わることなど無いのだ。
 フィグは笑みを浮かべて己が主にその温もりを伝え続ける。主といるこの瞬間が何よりの幸いだと、温もりが伝えてくれる。
 美しい光景の中、身を寄せ合う主と従者は静かに時を過ごす。その姿は、今後も変わることのない2人の在り方を写すかのようだった。
イラストレーター名:大雪基地