ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

火眼黒装の騎士・グスタフ
散椿の黒猫・エレナ

■リヴァイアサン大祭『Je vous suis attache』

 リヴァイアサン大祭:終宴後――。
 グスタフとエレナは部屋でのんびりと寛いでいた。
 ソファに並んで座り、時折、紅茶で休憩を挟みながら、終えた宴に関する感想を互いに述べる二人。とはいっても、話しているのはエレナばかりだ。グスタフは、目を閉じ淡い笑みを浮かべながら、彼女の話を聞いているだけ。
 少し話し疲れたのか、エレナは、ティカップの冷めた紅茶を一気にゴクゴクと飲み干す。フゥと一息つくエレナの横顔に、グスタフは、また笑みを浮かべた。
「あれっ、もうこんな時間?」
 時計の針が示す時刻に驚くエレナ。グスタフも、予想以上に夜が更けていた事実に少し驚いた様子だ。だが、慌てて席を立とうとするエレナを、グスタフは引き止めた。グッと、彼女の腕を掴んで。きょとんとした表情を向けるエレナ。そんなエレナに対し、グスタフは、どこか照れくさそうな表情を浮かべながら、上着のポケットから小さな箱を取り出すと、それを、そっと差し出した。
「君に似合うと思ってね」
 グスタフからのプレゼント。それは、白椿があしらわれた髪留め。
 とても綺麗な嬉しい贈り物にエレナは目をキラキラさせた。と同時に、すぐさまエレナもグスタフに用意したプレゼントを贈る。
 エレナからのプレゼント。それは、雪結晶を模した水晶の指輪。
 反応を不安気な様子で待つエレナに対し、グスタフは低くも優しい声で言う。
「ありがとう、エレナ」

 少し遅れたけれど、無事にプレゼント交換を終えた二人。
 グスタフが宣誓を切り出したのは、それから間もなくしてからのこと。
「エレナ、改めて君に誓うことがある」
 抱き寄せられ驚きながらも、エレナは彼の想いに耳を傾ける。
「俺は傷つける事しか出来ない剣だ。君を護るとは言えない。だから……俺は剣として、君に仇なす者を薙ぎ払う。ずっと、エレナの傍で」
 グスタフの想いを聞いたエレナは、
「……私はずっと一人でも生きていけると思ってた」
 そう小さな声で呟くと、顔を伏せた。
 だが、すぐに顔を上げ、グスタフの目を見つめて続ける。
「でもね、貴方と出会って気付いたの。強い自分を演じる為に、そう信じたかったんだって」
 心に秘めていた想い、自分自身の弱く脆い部分。それを吐き出したエレナの瞳が、少し潤む。けれど、そこに後悔や悲しみの感情はなかった。そのときエレナの胸を占めていたのは、愛情。目の前の彼を、たまらなく愛おしく想う、その感情だった。
「貴方になら、グスタフになら私の背中を、全てを預けられる。私には貴方が必要なの。だからお願い、ずっと一緒に……」
 エレナの想いに対し、グスタフが声を返すことはなかった。
 グスタフはその必要がないと思ったし、エレナもまた、それを欲していなかったのだ。
 もう、言葉なんて、いらない。今、必要なのは――。
 二人は、自然と唇を重ねた。
 粉雪踊る聖なる夜、愛しき想いよ永遠に。
イラストレーター名:みろまる