■リヴァイアサン大祭『貴方と共にいると誓う』
青白い光が、揺れる。夜空に放つ。……雪蛍に、思いを込めて。
「エヴァ」
ナナリーはエヴァをリヴァイアサン大祭に誘った。
パートナーを想う祭りに、空から見守るリヴァイアサンに、ちょっとだけ勇気をもらって――。
(「大切な仲間で、大事な私のお姫様に伝えたい」)
……今まで大事にとっておいた言葉を伝えたくて。
エヴァはナナリーの誘いに優雅に微笑んだ。
微笑みながら、わずかな緊張も彼女の中を取り巻いていた。
「ええ、ナナリー」
ナナリーはエヴァにとってかけがえの無い存在だ。
(「唯一人の騎士様……なの」)
――この胸の想いが届きますように。
エヴァは祈るように、思う。
――誘ってくれたナナリーの想いも同じでありますように、と。
一緒に歩きながら、最初はなんだか恥ずかしくて、落ち着かなくて、エヴァはそわそわとしていた。
気高いエヴァのそんな様子を可愛らしく思いながら、ナナリーは意識せず微笑む。ナナリーの柔らかな視線に気付いたのか、エヴァもまた笑みを浮かべた。
「綺麗な雪の夜空ね。……けれど、少し寒いわ」
やや身震いして言葉を紡ぎ、エヴァはそっとナナリーの腕を取って寄り添った。
(「もっと、甘えたい。……べたべたしたい」)
エヴァはそう思う。そのまま、行動に移すことはできないけれど。
空いた手に持ったランタンに、掛ける想い。
(「伝えたい」)
――ずっと、隣に……傍らに。
ナナリーの想いもエヴァの想いも重なっていた。
ナナリーは息を吸う。そっと、羽織っていたマントをエヴァにかけた。赤い瞳を見つめ、ナナリーは口を開く。
「私のパートナーに……、私のマスターになってほしいんだ」
エヴァはナナリーの言葉に一瞬、呼吸を忘れた。
ランタンに掛ける想いは、同じだった。重なっていた。
エヴァはそのことを嬉しく思い、ナナリーに告げる。
「ありがとう、ナナリー」
(「私の足りないものを、満たしてくれるあなたの言葉……」)
微笑んで、口付けた。雪のような、淡い口付けを。
「……喜んで、私のガーディアンになってもらうわ」
口付けに……その言葉に、ナナリーの胸にじわり、と広がる。
今のこの大事な気持ちを忘れたくないと思う。
「エヴァ」
白く繊細な指先に触れ、そっと指輪を手にした。
これからもエヴァの隣にいたいと願って。
(「……この想いを指輪に込めて、エヴァに贈ろう」)
その指輪を素直に受け取ってエヴァもまた、ナナリーの手を取る。
「指輪の交換ではないけれど……」
白い肌が重なり温もりも重なり、エヴァは小さく呟いた。
「私の騎士様に想いを込めて、指輪を贈るわ」
互いの指に、指輪が光る。
手を重ねたまま、空に昇る光を二人で一緒に見つめた。