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ふたりのリヴァイアサン大祭

愛こそすべて・レイラ
くろねこマスター・フィオリス

■リヴァイアサン大祭『リヴァイアサンに乾杯』

 向こうの露天風呂だと水着がうっとうしい。レイラのそんな意見をきっかけに、二人で女湯を探しに出た所、すぐ近くに人気の無い女湯の露天風呂を発見したのは幸いだった。
 レイラは自分用にお酒と杯、フィオリスのためにジュース、さらに物を載せて浮かべる為のお盆を用意して、準備万端で湯船に浸かる。同性同士だし、身を縛るものなど何も無い開放感がたまらない。しかし、先に湯船に浸かっていたフィオリスは、困ったような緊張したような複雑な表情を浮かべる。
「さすがにそれは……無謀じゃないかと……」
 フィオリスのブルーの瞳の先には、レイラの手に保持された、大きめの七面鳥の丸焼きがあった。それを、どう見ても七面鳥の大きさよりも小さいお盆に載せようというのである。
「大丈夫ですわ♪ 白鳥だってあの体で浮かびますし♪」
 自信満々、レイラはそうっと、お盆の上に七面鳥を近づけていく。
「白鳥は半分浸水してます……あ」
 不安そうなフィオリスの表情は、緊張で段々こわばっていく。杯を持った手に、きゅっと力が入る。しかし、お盆に載せられた七面鳥は……意外や意外、水没せずに浮力を保って水面に浮かび続けた。
「お盆も舐めたもんじゃ……って、あ」
 しかし奇跡的な均衡も束の間、大きさが不釣合いだったのだろう、バランスを崩して哀れ七面鳥は水没してしまった。
「…………」
「七面鳥は犠牲になったのだ……バランスの犠牲にな……」
 ゴハンを粗末にしちゃ駄目、といわんばかりにジト目で見つめてくるフィオリスから、誤魔化しきれず視線を逸らすレイラ。
「すみません、すぐ片付けますわ」
 レイラはいそいそと沈没した鳥を片付ける。その後改めて仕切り直し、浮かべるのをケーキに変更した。お互いに杯を持って、チン、と打ち鳴らす。
「乾杯……」
「ですわ♪」
 まあ、フィオリスはジュースなわけだけど。こういうのは気分が大事なのだ。くい、と杯を傾けて、ため息ひとつ。ほんの僅か、先ほどまでのにぎやかさからは打って変わり、沈黙が訪れる。それは気まずいものではなく、お互いに心地よい瞬間。
「幸せ、ですね……」
 小さな小さな、フィオリスの呟き。頬は赤く染まり、少し色っぽくも見える。そんな彼女を見たレイラは、嬉しそうに微笑んだ。
「そういって頂ければ幸いの至り♪ 私、フィオの幸せのためなら、あのリヴァイアサンを撃墜することも厭いませんわ!」
「墜としちゃ、ダメですよ……?」
 水しぶきを上げながら立ち上がるレイラを、苦笑しながら見上げるフィオリス。
「今日は二人で平和をお祈りする日、です」
 一言付け加え、こっそりと、ケーキの乗ったお盆を保持しながら。
「それじゃフィオ、ケーキ食べましょ? 食べさせてあげますわー♪」
「もう、レイラったら……」
 そんなやり取りをしながら、お互いにケーキを食べさせあいっこした。遠くからは祭の喧騒が聞こえる。けれど、ここは二人きりの大事な場所だった。
イラストレーター名:YWAKA