■リヴァイアサン大祭『結ぶこの手に想いをのせて』
カチカチと、リクの歯が鳴った。顔が青いリクに「大丈夫?」とカノハが顔を覗き込む。
自業自得といえば自業自得なのかもしれないが。
(「こんな真冬なのにかき氷大盛りを食べるとか――震えが止まりませーん」)
この腹の底から冷え切った体。リクは動いて体を温めるために、そして「あまりにも可哀そうだから」とカノハも付き合って、二人でダンスホールにやってきた。
人が大勢の場所で、ざわめきに紛れる。
リクははっとした。
「やっぱリンボーダンスしかない?!」
程よい具合に棒を発見したリクが妙にキラキラしながら言う。
「皆見てるから止めましょう! ……恥ずかしい!」
やや慌てたカノハがぶんぶんと首を横に振った。「そぉ?」とリクは棒を見つめる。
リンボーダンスを取りやめる様子のリクに「そうだよ」と落ち着きを取り戻したカノハはふんわり微笑んだ。
リクはしばらく、そんなカノハの顔を見つめる。
普段、カノハとはすごく仲のいい女友達という感じなのだが……『可愛い』と、思った。
ダンスホールであるからには、周りではダンスをしている。
ざわめき、さざめきがほんの少し遠くなったように思えた。
リクはきゅっと一度拳を握る。寒さからではなく、自分の緊張を押し込めるために。
「ご一緒に踊って頂けませんか? おてんば姫?」
声が震えることはなかったが、ふざけ交じりでないと誘えなかった。
(「こんな時も私はおてんば姫?!」)
カノハの中でそんな思考が掠める。だが、誘ってきたリクの顔は赤くて……自分の頬も熱いことに気付いていた。
「へへへ……」
カノハは思わず笑ってしまいながら、差し出されたリクの手に自らの手を重ねる。触れあった場所から温もりが広がる。
――願うような想いは、届いただろうか。
(「この秘めた大切な想いよ、君に届け」)
リクが微笑み、カノハもまた微笑み返す。
嬉しそうな……幸せそうなリクの笑顔にカノハの中でもじわりと、広がる。
(「私も幸せだよ」)
互いに、想いが満ちるようだった。