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ふたりのリヴァイアサン大祭

花筵・フォルテ
虚骨・ナイ

■リヴァイアサン大祭『memoria』

 人々は季節を愛でる。雪が木々と花を象る様に降り積もった庭園を、人々は楽しむ。雪の花は、見付けた者の想いや願いを映して咲くのだという。リヴァイアサン大祭を楽しむ人々に混じり、二人は庭園を散歩しながら、多種多様の花達を眺めていた。共に並んで歩きながら、気持ちは通じていたらしい。自然と、互いに贈る、想いの花を探し始めた。
 ナイは、一重の薔薇を摘み取る。振り返れば親友の姿。花を探す親友の背中を見つめたフォルテは、細枝に咲く亜麻の花を摘み、振り返る。その胸先には、ナイの薔薇が雪より募る思いごと差し出される。贈られる薔薇には相好を崩す。
(「ありがとう」)
 親友の想いを愛しむように、花弁に口付ける。
(「大好き、そのままの君でいて」)
 言葉には出さないけれど、その口付けは、きっと心で感じてくれた印だと感じて。
(「好きだよ、君の幸せを日々願います」)
 祈り込めた花をナイへと贈る。返る亜麻の花を受け取って、彼女は甘く微笑む。彼女の表情につられたフォルテも、柔く微笑んだ。
 そして、やっぱり二人並んで、庭園を歩く。交換した花を手に、壊さないように、落とさないように、そうっと、そうっと。視線を落とし、足並みもそろえて。
「しかし見れば見る程、砂糖菓子のようだな……」
「さっきの、じゃ、味まではわからなかった?」
 華を見ながらのフォルテの言葉に、口付けの揶揄返し。
「さっきのはバードキスだったから」
 そんな軽口を返しながらナイの表情を伺うとなにやら思い悩んだ様子。食べてみたいけど勿体無い、と手を解いて花を眺めていた。葛藤する彼女の様子を見て何やら思いついたフォルテは、僅かに微笑み。
「では私が味見を……隙あり!」
「……あ!」
 ナイの手の内にある花の花弁を、唇で挟み一枚食べる。なじるように灰色の瞳を見つめれば、手の内の薔薇を差し出す彼女。
「ふふ、私のも一枚いいよ」
 差し出された花弁に、遠慮なく一口。二人でしばらく黙り込んだ後、フォルテが呟いた。
「味は……しないねえ」
 残念そうに呟けば、くすり、と笑みがこぼれた。
「ああ、ほんと残念」
 それなのに笑えてしまうのは、君の所為だ。残念、残念だけれど、笑いは耐えない。二人はそのままころころと笑い続ける。
 雪の華咲き誇る庭園で、想いは通じ合う。そして二人、祈りを捧げて。どうかいつまでも、好きな相手と幸せでいられますように。そんな、幸せな記憶。
イラストレーター名:むん。