■リヴァイアサン大祭『冬の想い出』
星霊リヴァイアサンが空を舞う、一年に一度の日。エルフヘイムでは、大切なパートナーとこの日を共に過ごすということだから、バルトも好きなひとと楽しむことにした。
バルトはゆらゆら可愛いウサギの耳をつけて。
リュウジはちんまり可愛いハムスターの耳をつけて。
仮装をしてリヴァイアサン大祭を過ごしたふたりだが、未だ、楽しいおしゃべりは尽きることが無い。
外は寒いけれど、てくてく夜のお散歩。
ふたりで話しながら歩けば、時間も道のりも全然苦にならない。
「もうすぐだな」
「そうだね」
吐く息がほわほわ白いのは寒さのせいだけれど、ふたりで同じ場所を目指して行くのは存外心が浮足立って、呼吸もリズミカルに弾んでいるかのようだ。
やがてリヴァイアサンが最も近くを飛ぶという丘に辿り着く。
ここでパートナーの絆が続くよう願掛けをするそうだから、と口に出さないまでもバルトもリュウジも考えていたのかもしれない。
見渡す夜空の遥か向こう、ゆらりゆらり、回遊してくるリヴァイアサン。探すまでもなく、その遠目からでも大きく優美な姿はすぐ見付かった。
思わず額に手を翳して感心した様子でそれを見詰めるリュウジと共に、バルトもそれを眺めた。
「あっ、こっち来たぜ」
バルトが指さす。
「幻想的だな〜」
マイペースな普段の雰囲気そのまま、リュウジが呟いたのはリラックスしている証拠だろう。
バルトも、そんなリュウジの隣で自然な気持ちで楽しめているのが嬉しかった。
いつも通りなのはそれはそれで嬉しいけれど。
(「アタシの方も向いて欲しいな」)
ぼんやりと星空を眺めてることが多いリュウジだから、こんな大切で特別な日には不意打ちしてやろうといういたずら心が沸き起こる。
「ていっ」
気前良く、バルトは何の前触れも無しにリュウジに抱きついた。
可愛い可愛いと自分が年下にも関わらず姉御肌のバルトがリュウジをなでなですれば、されるがままのリュウジの頬が瞬時にかぁっと赤くなって、みるみる火照っていくのがわかる。
「わっ、わっ……」
今にも鼻血を出すんじゃないかという純真さだ。
ウサ耳少女に抱きしめられてなでなでされるハムスター耳の青年。
小動物(というには片方はかなり長身だったが)がじゃれ合っているようなふたりの夜を、リヴァイアサンと、舞い落ちる雪が見守っていた。
バルトとリュウヤの、冬の想い出がまた一つ。