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ふたりのリヴァイアサン大祭

金瞳小龍・ルベル
温泉うさぎ・パティ

■リヴァイアサン大祭『Honey Sweet Memory』

「こんなにたくさんお菓子の店が!」
「わ〜! 甘い匂いでいっぱいだよう!」
 星霊リヴァイアサンの出現によって流れる甘い蜜の川。その畔にずらりと並んだ店を見てルベルとパティは歓声を上げた。
「お団子もあるといいね、ルベルくん!」
「え? あ、ああ、そうだな」
 甘党のルベルにとっては夢のような場所だ。しかし、今回の目的はお菓子ではなかった。
 今年一年、何かと世話になった彼女に感謝の気持ちと、これからもずっとよろしくな、という気持ちを形に残る物で贈ろうと思い買い物に誘ったのだ。
 けれどそのことは話していない。いわゆるサプライズというやつだ。

 一方、パティはこっそりポケットに手を当てた。そこには手作りクッキーが入っている。ルベルから誘われたあと、大急ぎで作ったものだ。
 リヴァイアサン大祭は、大切な相手との絆を確かめ合う日。だからいつも仲良くしてくれるルベルに喜んでもらいたいと思ったのだ。
(「でも、おいしそうなお菓子がいっぱい……大丈夫かな?」)
 どのお店のお菓子もかわいくておいしそうなものばかりだ。がんばって作ったけれど、少し自信がなくなりそうになる。
「……ううん、こういうのは気持ちが大事だもんね!」
「ん? 何か言ったか?」
「な、なんでもないよ」
「そうか? じゃあそろそろ行くか」
「うん!」
(「そして素敵なプレゼントを探すぞ!」)
(「ぜったい喜んでもらうんだもんね!」)
 二人は内心こっそりと気合を入れ直し、甘い香りの漂う空間へ飛び込んでいった。

 あちこちで買い食いしながらハニーバザールを満喫して歩く二人。
 やがて、ルベルはアクセサリーを扱う店の前で立ち止まった。手を繋いでいたパティもつられて足を止める。
 ルベルは商品の一つに手を伸ばした。数あるアクセサリーの中で、シンプルながらもかわいらしいデザインの指輪に――パティに似合いそうなそれを迷わず手に取る。
「すいません、これ一つ。あ、包みはなしで」
「えっ!?」
 意外な買い物に驚くパティをよそに、即決で会計を済ませたルベルは、手にした指輪をそのまま差し出した。
「……え?」
「今日は年に一度しかない記念すべき日なんだしパティにプレゼントだぜぃ♪」
 照れたような笑顔にようやく状況を理解して、パティの顔にも笑みが広がっていく。
「さあ、どの指に嵌めて欲しい?」
「……ずっと仲良くいられうようにって願うから、一番長い中指に嵌めてほしいよう」
 それを聞いた少年は、はにかむ少女の手をそっと触れた。

「わぁ、きれい……!」
 空にかざした指輪はきらきらと輝いて、今まで見たどんな物より美しく見える。
 その姿を嬉しそうに眺めるルベルに、今度はパティが渡し損ねていたクッキーを差し出した。
「これ、わたしが作ったの……食べさせてあげるね」
 さっきのルベルのように照れ笑いを浮かべるパティ。
 あーんと開けた口に広がる味は、どんなお菓子よりもおいしかった。
イラストレーター名:乙部はるきち