ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

成された現想・エア
常花・ナギ

■リヴァイアサン大祭『ただ、傍に居るだけで』

 まるで奇跡の様な出来事が起こり続けるリヴァイアサン大祭。氷の花のステージを楽しんだ後、エアとナギの2人は街を見て回る事にした。
 エンドブレイカーとしての使命とはいえ、定位置に留まれない生活は不便な事も多いが、こうして新しい場所を散策できるのは良い面でもあろう。
 緊張が抜けきらないナギは、自身の緊張を解こうと目に入る景色一つ一つを追う様に視線が動く、が。
 隣にいるエアは、何故かナギの方へ視線を落としていた。
 丁度彼の顔が視野に入ったところで、妙なこの状況に気付くナギは彼と視線を合わせていく。
「えっと……何かみたいものはないのでしょうか?」
 退屈だったりしないのだろうかと、少し心配になったナギは確かめるように問う。
「これといって……ナギと回る事が目的だからな」
 さも当たり前といった様な表情で答える彼に、一間置いてから彼女の表情が緩みだす。
「そ、そうですか?」
 それは場所や出来事ではなく、自分自身を求める言葉。
 率直な言葉に胸が躍り、表情を隠せない。
「あぁ。だから……ナギが行きたいところに行ってくれれば、それが俺の行きたいところになる」
 砂を吐くようなセリフに、ナギの心音が高鳴る。
 変わらぬ表情で告げる彼の、真っ直ぐな心は……遠慮なく彼女の瑣末な不安を砕いた。
「では……甘いもの、一緒に食べに行きませんか?」
 彼の視線に気付く前に見つけた、一軒の喫茶店を指差す。
 雰囲気の良さと共に、期待出来そうな甘い香りが、2人へと届いていた。
 そうするかと快諾するエアの様子に、花開く様に微笑を浮かべるナギ。
 早速、喫茶店の扉をくぐり、中へと入っていった。
 甘味でひと休みした後、再び街を歩き回る2人。
 何気なく立ち止まった花屋、軒先には多種多彩な花々が並び、プレゼント用にミニブーケに纏められたものもある。
 美しい景色に、微笑を浮かべるナギだが……見上げた先にいるエアは、何故か驚きの表情を浮かべていた。
「どうかされましたか?」
 別段、珍しい花がある様には思えず、驚きを与えるようなものは見当たらない。小首を傾げながら問うナギへ、エアの視線がゆっくりと落ちる。
「こんな寒い時期に……花が咲いているんだぞ?」
 ポカンとしてしまうも、言葉の意味がそのまま理解できれば、クスクスと笑みが吹き零れてしまう。
「冬にだって、咲くお花はあるんですよ?たとえば……」
 そういって、花へ手を伸ばすナギ。
 その様子を真剣に眺め、真摯に耳を傾けるエア。
 冬空の下、お花のレクチャーが始まっていく。
 束の間の平和を彩る、一ページとして。
イラストレーター名:乙部はるきち