■リヴァイアサン大祭『En nieve milagrosa』
星霊リヴァイアサンが空を舞うこの日は、エルフ達がパートナーの絆を確かめ合う大切な日だという。水の上位星霊はエルフヘイムの上空から雪を降らせ、奇跡のように幻想的な光景をもたらしていた。ルキラは舞い落ちてきた真っ白な雪にそっと手を伸ばして触れる。その軽やかな感触に頬を綻ばせるものの、やはり冷えた空気や体にもしきりに触れる雪は寒くて、身を小さく震わせた。
傍らに立って雪にはしゃぐ嬉しそうなルキラを眺めていたリュアンは、ルキラのその小さな動作に気付き、そっとルキラを背後から抱き寄せて、自分のマントを広げて内側にルキラを包み込んだ。寒さで冷たくなってしまった彼女の手を、リュアンの暖かい手がふんわりと包み込む。
「……ばれちゃった?」
一瞬目を見開いて驚いたような表情を見せるも、マントの中の暖かなぬくもりに肩の力を抜いて彼に素直に寄りかかりながら、ルキラが嬉しそうな声でぽつりと呟く。
「俺がルキラのこと、気付かないとでも思ったのか?」
首を傾げて浮かべた柔らかい微笑と、ほんの少し複雑そうな気配が混じる声でリュアンは問う。リュアンの言葉を聞き、ルキラはくるりと彼の方に向き直って、見上げるようにして彼の目を覗きこんだ。
「……思わないっ」
ルキラは嬉しそうにリュアンに抱きついた。そして、満面の笑顔でリュアンと目を合わせる。
「いつもありがとう……大好き♪」
毎日感じている感謝の気持ちは、リヴァイアサン大祭の今日だから素直に言えるのかもしれない。先程よりももっと強くぎゅっと抱きついて、その胸に顔を埋める。
あったかくて、いちばん大好きな場所。自分だけの、大切な居場所。
「……俺も大好きだよ」
リュアンもその腕の中の温もりを包み込み、お返しとばかりに抱き締める。
雪の降る今日の出来事は、二人の絆をより一層深めてくれたに違いない。お互いが居るという幸せな気持ちに包まれながら、二人は肩を寄せ合って互いの温もりを味わっていた。