ステータス画面

ふたりのリヴァイアサン大祭

硝子の祈り星・ミーチェ
虚構のレセフェール・リーベル

■リヴァイアサン大祭『白雪の中で 〜*約束を遂げる夜*〜』

「いつか一緒に雪を見よう」
 リーベルがミーチェにそう告げたのは、リヴァイアサン大祭の一ヶ月前。
 冬でも青々とした葉を繁らせた背の高い木が連なる森の奥で、リーベルとミーチェはその約束を果たした。
 今日はリヴァイアサン大祭。
 人々の賑わいから離れ、足音さえ吸い込まれそうな一面の雪景色に、ミーチェの口から感嘆の吐息が漏れる。
「うわぁ……」
 深々と降り続ける雪が、ミーチェの広げた手に落ちる。
 結晶さえ見えそうなほど柔らかく大きな雪の粒は、体温であっという間に溶けてしまった。
 ミーチェはじっと掌の水滴を見つめ、そしてまた降り積もる雪へと視線をあげる。
「雪ってこんなにちいさくて、儚いものなんですね……だからこそこんなに綺麗なのかな」
 ミーチェの声はかすかな興奮と喜び、そしてほんの少しの寂しさをはらんでいる。
 声に振り返ったリーベルの目には、ミーチェこそが雪のように儚く映る。
 無意識に言葉が口を突いて出た。
「……確かに、触れれば溶けて消えてしまう、儚く綺麗なモノだけれど」
 リーベルの言葉にミーチェが顔をあげる。
 遮るものも、音もない。柔らかい静寂の中でリーベルは言葉を続ける。
「世界には、これよりもずっと綺麗なモノが、沢山あるよ」
 ふ、と二人で微笑みを交わして、ミーチェは再び雪景色に見入る。
 その姿が消えてしまうような気がして、リーベルは後ろからミーチェを抱き締めた。
「……っ、ベルさん?」
 すっぽりと腕の中に納まってしまうミーチェは確かに小さく可愛らしいが、その体温も感触も消えてしまう雪のように儚いものではない。
 それが解ってもリーベルはミーチェを抱き締めて動かない。口許には優しい笑みを浮かべてただじっと抱き締めている。
 最初は羞恥と驚きに戸惑っていたミーチェだったが、リーベルの温もりは心まで包むように温かい。
「ありがとう、ベルさん」
 小さな声は、この幸せへのお礼を呟いて閉じてしまう。
 ありがとうの意味を問おうとして、リーベルは口を開きかけた。が、抱き締める腕にそっと重ねられたミーチェの手の暖かさに、言葉を紡がずに口を閉じた。
 音もなく雪が降っている。
 この幸せな時間を大切にしたいと、リーベルとミーチェは互いの温もりを感じながら、しばらくそこで雪を眺めていた。
イラストレーター名:hosi