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ふたりのリヴァイアサン大祭

闇二佇ム紅薔薇・レイ
花愛人・ガルデニア

■リヴァイアサン大祭『雪化粧――その手の温もりは』

 リヴァイアサン大祭の夜。雪が深々と降る裏路地に2つの影があった。
 身を寄せ合い、寒さを凌ぐように手を握り合って雪道を歩く。寄せる身は互いの温もりを伝え合い、握る手は相手の存在をより確かに伝えていた。
「ふふっ。レイとこうして手を繋ぐのは照れるけど、冷たい手のひらが少しでも温かくなれば嬉しいんよ」
 繋いだ手をもう一度握りしめて、ガルデニアとレイはお互いの存在を感じ合う。
「くくっ、そういえば前に話てたよな。俺の手が冷たいから、ガルがカイロ代わりになってくれるっつー話」
 それはいつの会話だっただろうか。2人で話した時を思い返すようにレイは上を見上げる。
「うん。ほんに……残るほどの熱になれたら、面白いんになぁ」
 繋いだ手の指を弄りながらガルデニアは呟く。自身の望むことが何なのか。レイに対して自分が何を思っているのか。
「お前の温もりは俺の手に、心に残ンぜ? ほら、前も言ったが温もりっつーのは生きてる証拠、人間らしいものだから大事にしねぇとな?」
 レイがガルデニアの宝石のような瞳を見てしっかりとそう伝える。美しいその瞳にはレイの温かな微笑が写り込んでいた。
「そうやねぇ。例えばそれが一夜限りの夢幻でも、残る温もりを思い出せれば。きっと、意味のある時間に思えて、嬉しい」
「一夜限りぢゃねぇぜ? こうしてお前といると安心できるし飽きねぇからずっと居たいって俺は思うぜ?」
 ガルデニアの言葉を否定し、確かな今をレイは告げる。その言葉の響きは力強くガルデニアに刻まれる。けしてこれは一夜限りの夢幻ではなく、これからも続く繋がりなのだと。
 人気のない場所で寄り添う2人。今この時この瞬間は、確かに世界は2人のものだった。静かに降る雪が2人を包む世界をずっと感じていたいと願う。これは2人とも声に出すまでもなく、心から願ったことだった。
 気付けば、手から伝わる温もりは全身に広がっていた。この温もりは体温だけではなく、きっと心の温もり。お互いを信じて思い合う温かな気持ち。
 共に寄り添い、同じ時を刻む命の温もり。
 
 ―――静かな雪の世界で、2人は寄り添い続けるのだった。
イラストレーター名:hosi