■リヴァイアサン大祭『畔のバザールで星霊(パートナー)達と』
「おいしーっ!」ハニーバザールを歩きながら、レムネスは買ったばかりのパンケーキの美味しさに歓声をあげた。
「あ、スゥも気になる?」
左肩に載せた星霊スピカのスゥが、くりっとした瞳でレムネスとパンケーキを交互に見つめているのに気付き、レムネスはそう笑いかける。
今日が、エルフ達がパートナーと共に過ごす日なのだというのなら、レムネスにとって、その相手は間違いなくこのスゥだろう。
気になるなら分けてあげるね、とパンケーキをひとかけら差し伸べれば、スゥは口元を伸ばしてそれに齧りつく。
「あ、リオリオくん。そっちは何か気になるお店とかあった?」
「ん……これ」
そうしている間にレムネスは、見知った背中を見つけて声を投げかけた。その相手は、頭の上に星霊ヒュプノス・ひゅぷのを載せたリオリオだ。
レムネスがスゥと過ごすなら、リオリオはひゅぷのと一緒。互いに大切な星霊を連れた者同士、戦利品のお菓子を見せ合う。
「やっぱり」
リオリオの抱えた袋にレモンが描かれているのを見て、多分そうじゃないかと思っていたんだ、とレムネスは屈託無く笑う。リオリオは柑橘類が大好物な事を、レムネスはよく知っていた。
「そっちは?」
「オレンジのクレープ。……味見する?」
「いいの?」
嬉しそうに笑うと、じゃあ小川のほとりに座って互いのお菓子を分け合いっこしよう、とレムネスは自分のお菓子を見せる。チョコレートのかかった菓子パンや蜜を煮詰めたキャンディなど、紙袋は美味しそうな物でいっぱいだ。
「そっちも美味しそう、だね」
「でしょー? ついつい買っちゃったんだよね♪」
和気藹々とお菓子談義に花を咲かせつつ、ハニーバザールを抜けて小川を目指そうとする二人。そうだ、と思い出した様子で、最後にレムネスは果物の屋台でレモンを買った。
「それ、は?」
「ホットレモネードを作ろうと思って。川の蜜を使って、直接」
なるほど、と感心した様子のリオリオと小川へ辿り着けば、そこは今日だけ、甘い香りを漂わせながら蜜が流れていく。
それをすくって、レモンを絞って。
できたて、ほかほかのホットレモネードを注いだカップを手に、二人はお菓子に手を伸ばす。スゥとひゅぷの、2匹の星霊も一緒になって賑やかに食べる時間は、あっという間に流れていった。
「あ、雪、だよ」
「ほんとだ」
お菓子が尽きた頃、ふと二人の上に舞う粉雪。リオリオの声にレムネスは頭上を見上げて、思わず零す。
「この川といい、雪といい、星霊リヴァイアサンって凄いね〜♪」
「うん」
上空、遠くに見える影はきっと、そのリヴァイアサンなのだろう。二人はしばらくその光景を見上げていたけれど……。
「ところでリオリオくん。あっちにも屋台、あるみたいだね」
「気になる、よね?」
二人は顔を見合わせて、それから笑って。
どちらからともなく相棒を載せて立ち上がると、新たなお菓子を求めて、屋台の方へと歩き出した。