■クロノス大祭『繋がる、暖かさ』
薄暗い部屋――。部屋には仄かな柔らかい灯りと、窓の外で煌く金砂を纏った雪のわずかな輝きだけ。
遠く聞こえていた賑やかな祭りの音も消えた。
ゆっくり流れる静かな時間の中で、2人はグラスの酒を傾ける。
普段は主人と執事。マスターとガーディアン。けれど――。
程よくアルコールが入って、あまり思考が回らないカルディノはぼんやり窓の外を眺める。
(「……部屋が薄暗いと、雪が灯りのように見えるな」)
カルディノが、ぼんやりとそんな事を考えた時、
「……!」
背に大きなぬくもりを感じた。
「だ、りす……?」
驚いて後ろを振り返ろうとした瞬間、
「カルディノ、いつもありがとうな。……一生、離さんぞ」
耳元でダリスの心地良い囁きが耳に響く。振り返ってダリスの顔を確認する前にカルディノの動きは止まった。
カルディノは突然の事に驚いて体を強張らせる。そして頬をほんのり染め、胸を高鳴らせた。
(「……驚いている私を楽しんでいる気がする……」)
ドキドキと早鐘を打つ鼓動を感じながら、楽しそうな顔をしているであろうダリスの顔が浮かんで少しだけ悔しい。けれど、それ以上に嬉しいと思う自分もいる事を素直に認めるカルディノ。
後ろから抱きしめられたまま、ダリスの腕が伸び、カルディノの指に絡まった。
「カルディノ、愛してるぞ……」
ダリスはカルディノの耳元で低く優しく囁く。
「……っ」
途端にカルディノの体が更に強張るのをダリスは腕の中で感じた。そして、自らも指を絡ませる精一杯のカルディノに目を細める。
(「あぁ、だが。黙ってたままではいけないな……」)
ダリスから心地良いぬくもりと幸せを与えられるだけではいけない。そう考えたカルディノは精一杯勇気を振り絞り、振り返る。
そこには優しく微笑むダリスの瞳があった。
「ダリス。……私も、だよ。あいしてる」
カルディノはダリスの瞳を真っ直ぐ見つめて告げた。
耳まで真っ赤にしたカルディノの言葉に、更に柔らかく微笑むダリス。その顔をいつまでも見ているのは照れくさかったカルディノは視線を窓の外に戻す。
金砂を纏って煌く純白の雪が静かに降り注ぐ。
(「……泣きたくなるほど、幸せだ」)
――また、来年も。貴方とこうして、一緒に――。