■クロノス大祭『星降る夜の散歩道』
「今日は夜景が綺麗ですね」窓の外には、ライトアップされた街並みに不思議な金色の砂と真っ白な雪が舞っている。
そんな夜景を見たレイが微笑んだ。
「では、散歩にでも行きませんか?」
レビが提案すると、レイは「はい」と嬉しそうに頷いて、2人で街に繰り出した。
純白の雪と共にきらきら降り注ぐ金色の砂。まるで雪と一緒に星が降ってきたような。
窓から眺めるよりも実際に見たほうが何倍も幻想的な光景。
ここは、夜空と夜景がゆっくり見られるようにと、賑やかな表通りから1本奥に入った道。
「綺麗……」
レイは瞳を輝かせてその光景に見入る。そして――、
「……くしゅんっ」
小さなくしゃみ。雪が降る程夜風は冷たいのだ。
「……一緒に着ますか?」
レビが自分の黒いコートを広げてレイを誘う。
「え、えっと……」
レイは少し紅くなって考え込んだ。一緒にコートを着る、というのは確かに今より暖かくなるが、それだけ密着する事になる。
(「レビ様と一緒にコートを着る……あったかそうだけど……は、恥ずかしい……で、でも……」)
ちらりと上目遣いでレビの様子を伺うと、目が合い、
「……私と一緒は嫌ですか?」
少し苦笑気味に問われた。
「い、いえ、そんな事は……! あの、じゃ、じゃあ……その……お邪魔、します……」
レイが顔を紅くしながら遠慮がちに寄り添うと、レビは包むように優しく抱き寄せた。
1つのコートを半分ずつ一緒に着るというのは、とってもあたたかい。コートと一緒に互いの体温を分け合っているのだから。しかし、それ以上に恥ずかしさとか、照れくささとか、そういう色々で暖かいを通り越して熱いになっているような気がしないでもない。何せ一目惚れした相手なのだから。
それは誘ったレビとて同じ事。抱き寄せたレイのぬくもりに暖かくなりつつも、うっすら頬が紅い。
「本当に綺麗ですね……」
今までもゆっくり歩いていたのだが、コートを一緒に着て、更にゆっくりとレイに合わせて歩くレビが空を見上げながら呟いた。
「はい……凄く……」
夜空を見上げてうっとりと呟くレイ。
「帰りに何か温かい飲み物を飲みましょう。色々なお店も出ていますしね」
レビは言いながら、ほんの少しだけレイを強く抱き寄せる。
「は、はい……」
賑やかな表通りに出るのに、少し遠回りしてみようか――。