■クロノス大祭『 Une sensation chaude 』
夜になり、暖炉に火を灯した。照明は全て消して、明かりは柔らかい暖炉の火のみに頼る。
今日は一年に一度の特別なお祭り。
ミズキとクリスは同じ場所で働いていたが、お互いに忙しかったりして、こうしてのんびり過ごす時間が意外に少ない。
だから、このお祭りの日だけは二人の時間を作ろう、とミズキとクリスは決めていた。
隣に座るミズキの温もりを感じつつ、ぱちぱちと音を立て始めた暖炉の火を眺めてクリスは微笑みを浮かべた。
(「こういう暖かい時間が、僕は好きだ」)
「そういえば、今日……」
ミズキがそう言って、店に訪れたカップルの話を静かに始める。
クリスは頷きながら話を聞き、自分も歌を聞きに来てくれた子供たちのことを話した。
「あの子供たちのことだけど……」
ミズキもクリスの話を楽しそうに聞いてくれる。
一つ話が終われば、次の話題に。
そんな風に、道行く人の話や、昔あった人たちの話など、日々かかわり合っていく人々の話で盛り上がり、話はつきない。
穏やかな雰囲気の中、気が付くとミズキの手がクリスのお腹にそっと伸びてきた。
クリスはくすぐったさに思わず笑みをこぼす。
(「僕のお腹の中には、二人の宝物……新しい命が宿っている」)
来年の夏頃には、きっと二人から三人に増えているだろう。
クリスがミズキの手の上から自分の手を重ねると、ミズキはもう片方の手で、クリスの頭を抱き寄せた。
(「過去に家族を失った僕達だからこそ、新しい命がいとおしく、楽しみで仕方ない」)
クリスがミズキを見上げると、ミズキは瞳を細めた。
「……幸せな家庭を作っていこうな」
ミズキの優しい呟きに、クリスはそっとミズキに寄りかかって答える。
「当たり前だ……二人で、愛してあげるんだ」
隣に感じる愛しい人の温もりに、心の中まで暖かくなる。
二人で見つめ合い、最後にはキスを交わした。
おたがいの気持ちを確かめ合うように。
「愛してるよ」
「……僕も、ミズキを愛してる」