■クロノス大祭『時計塔の下で誓う愛』
(「告白してから1年……そろそろ次のステップに上がってもいい頃じゃないだろうか」)カオルは時計塔の下で、大事な待ち合わせをしていた。
懐には、この日の為に、用意した指輪。
記念すべき、この日だからこそ、決意を固めたのだ。
するとフィルは、着慣れないドレスを着用し、待ち合わせ先の時計塔に訪れた。
着ているドレスは、彼が似合うと勧めてくれた物。
ただ……。
(「自分でいうのもなんだが僕にドレスなんて似合わないだろ……で、でも、カオルが言うなら、着てやらないことも……っと思ったが」)
彼を落胆させてしまわないかと不安で仕方がない。
「君が着ろと言ったから着たんだぞ。だから僕は似合わないとあれほど……」
不安を紛わすようにでた言葉。
「……」
一瞬の静寂。
カオルは彼女の姿を、惚けたように見つめている。
(「いけないいけない。あまりの綺麗さ、可愛さについ見とれてしまった」)
似合うとは思っていた。なれど、実際に目にした彼女の姿は、あまりにも美しい。
「凄く、似合ってる」
予想外の言葉に、顔を真っ赤するフィル。
「!」
カオルは、そんな彼女の頬をそっと撫でる。
「あの、な……フィル。今日は伝えたい、ことがあるんだ」
カオルの行動に鼓動が高鳴るフィルだったが、彼の雰囲気を察し、問いかける。
「……どうした? 改まって……。」
すると、真剣の面持ちで、カオルは口を開いた。
「俺と結婚してください」
「……」
伝えられたプロポーズを一瞬理解できず、固まるフィル。
「……」
フィルの顔を見据え、カオルは、じっと答えを待つ。
どんな答えが帰ってくるのか?
その胸中は、期待と不安で複雑だ。
すると、フィルは真剣な面持ちで口を開いた。
「……月が綺麗だな」
その言葉の後、頬を真っ赤にし、目をそらすフィル。
(「自分で言ったはいいが相当恥ずかしいぞ、これ……ああ、もう、こんな顔絶対見せられない。」)
恥ずかしさのあまり、彼の顔を見ることができない。
だが、伝えるべき言葉は終わりではない。
彼女は、カオルに、真摯な思いをつぶやく。
「来年もこうして君と過ごせるといいな」