■クロノス大祭『重なる刻、貴方と共に』
いまや遺跡となった、古い時計塔の中。ホーリアとルゥイは、未知の文化を探索するためにそこに訪れた。
(「二人一緒の冒険なんて久しぶりだな……」)
今日が特別な日だということもあって、ホーリアにはどこか嬉しい気持ちもあり、少し顔がほころぶ。
突き当たった扉の一つを開くと、ひんやりとした室内に足を踏み入れる。
巨大な防具庫……その壁面には、かっしりと鎖で繋がれた大小の歯車が並び、床のタイルはまるで棋盤のような黒白のタイルが交互に敷き詰められている。
さらに奥の方では、おそらく罠の一つであろうギロチンの刃が、冷たく光ってその場を静かに威圧していた。
(「っと……油断は大敵だな……」)
ホーリアとルゥイは、ふたりで協力しながらひとつひとつ慎重に罠の仕掛けを外していく。
かちゃり、と仕掛けのひとつを外すと、侵入者を押し潰さんと巨大な歯車のひとつが落ちてきた。
ホーリアはさっと体をかわしてそれを避ける。だが。
「……痛っ!!」
「大丈夫か!?」
声を上げてうずくまるホーリアに駆け寄るルゥイ。その足元に彼女の血が滴っている。
うっかりしていた。飛びのいた先の床の罠に引っ掛かってしまったのだ。
ルゥイはすかさず、ホーリアの怪我の具合を確認する。
「だ、大丈夫だ……。すぐ追いつくから、先に進んでいてくれ。」
立ち上がれないほどの激痛だったが、痛みを悟られまいと、ホーリアは無理にぎこちない表情で微笑んで見せる。
ルゥイは、そんな彼女に苦笑しながら言う。
「置いて行けると思うか?」
そう言うと、ルゥイは動けないホーリアを、よっこらと胴から足を持って抱えあげた。『お姫様抱っこ』の体勢だ。
「少し、我慢してくれな」
「む、無茶は……するな!!」
赤面しながら、ホーリアは視線をそらす。恥ずかしさで目線も合わせられない……。
「俺も恥ずかしくない訳じゃないんだが。……たまには、頼れ」
ルゥイはホーリアに小さく微笑みを向け、頷いて、さらに言葉を続ける。
「二人での冒険も久々だったからな……今年も特別な日だと、内心浮かれていたのかもしれない」
ルゥイの言葉に、え? と顔を上げるホーリア。
「……無茶は、しないでくれな? それでもケガをしたら私が癒すから」
ルゥイの腕の中で、ホーリアは想う。
(「いつも私は彼に助けられてばかりだな……いつもは少し悔しいけれど、今日ぐらいはそれでも良いか……」)
ふとその時、ルゥイがあることに気づいた。
「ところでさっきの、自分で治せたんじゃないか?」
「……あ」