■クロノス大祭『金色の砂雪の下で 〜優しい温もり〜』
金砂と雪の舞う静かな湖。黄金と純白は湖面のステージで踊る。1年に1度だけの舞踏会場。街中では様々な露店や催しで賑やかなお祭り騒ぎだが、少し離れたこの湖は静かで緩やかに時が流れている。
「綺麗だな……」
「あぁ……」
その幻想的な光景を見ながらフェリーナが呟いた。傍らに寄り添うレイジも頷いて同意する。
「……っ」
肩にレイジの腕が回され、フェリーナは一瞬だけびくっと緊張が走った。
「この景色をフェリと見られて良かった……」
フェリーナの肩を優しく抱き寄せたレイジが囁く。
「あぁ……私もだ。賑やかな祭りも楽しかったが、こういう綺麗な景色をのんびり見るのも悪くない」
綺麗な景色を『愛しい恋人と』のんびり見るのも。その部分を口にしなかったのは、言う必要がなかったからなのか、フェリーナが照れているだけなのか。
「寒くないか?」
レイジが自分のしていたマフラーを外して、フェリーナに差し出した。
「いや、それではレイジが寒くなるだろう?」
「じゃあ、一緒に巻こうか」
苦笑して遠慮したフェリーナに、にこっと笑ったレイジが返事を待つまでもなく、向かい合ってフェリーナの首にマフラーをかけ、そのまま自分にも巻く。
一緒にマフラーを巻いた事でお互いの距離が更に縮まり、2人ともほんのり頬を紅くしているのは寒さのせいだけではない。
そのままレイジがフェリーナを抱きしめると、フェリーナもレイジの背に腕を回した。
「フェリ……」
レイジに名を呼ばれてフェリーナが顔を上げると、レイジの顔が近付いてきて――唇が重ねられる。
「……!」
不意打ちに目を見開き、顔を真っ赤にしたフェリーナ。
レイジが静かに唇を離すと、
「愛してる」
真っ直ぐにフェリーナを見つめて囁いた。
「私も、だ……」
フェリーナも真っ直ぐにレイジを見つめ、お返しに自分からもレイジに口付ける。
そして、しっかりお互いに抱きしめ合った。
(「これからも、一緒に……」)
そう願いながら――。