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2人でクロノス大祭

華廻エトランゼ・リシャ
星穿ヴァルキュリア・シア

■クロノス大祭『クロノス大祭某時 乙女祭開催中』

 ケーキやらキャンディやらで一杯のお皿を、テーブルからあふれる程に乗せる。街の片っ端から買い集めたお菓子で、シアとリシャは二人のお泊り会を飾り付け、誰に気兼ねする事もない楽な格好でソファーに座り込んだ。
 弾むシアとリシャの手の中には、それぞれ思い思いに選んだスイーツが入っていて、その甘い甘い味わいは、二人の笑顔を一瞬で満開にさせる。
「りっちゃんりっちゃん! どーヨそれ? あたし様のオススメだヨ!」
「しーちゃんしーちゃん! さすがって感じだよ! お菓子の世界って広いなあ」
 リシャの感動の声に、シアはすっかり表情を緩ませた。さて、とシアはテーブルを広げた手で示して言う。
「他のも食べヨ? えーっト、りっちゃんの買ってきたのハ……」
「あ、しーちゃん! これ! このお菓子も美味しいよ!」
 きっと、の言葉を飲み込んで、リシャはシアに苺のケーキを差し出した。ほあー、とシアは感嘆符を吐き出して、ためつすがめつ、いろいろな角度から観賞してから、一口。
 シアの頬に、喜びのえくぼが浮かびあがった。
「りっちゃんコノケーキ最高ヨ! すっごく美味しいワ!」
「……よ、よかったぁ。しーちゃんの口に合ってよかったよ」
「いやいや普通に美味しいワ! ドコのパティシエが作ったのカシラ!」
 普通に、の言葉に、シアの普段を知るリシャの表情が明るくなる。
「他には? もっとしーちゃんの感想とか、聞きたいなー、って」
「ウン、厳しく言うト、形が……カナ。でもデモりっちゃん、お菓子は愛情トいうあたし様のポリシーからすれバ、満点の上に花マルまでつけちゃうワ!」
 残った苺をクリームに絡めて、シアは別れを惜しむように口にした。
「ごちソさま、りっちゃん。んでサ、実際パティシエ誰なのサ。教えてくれないノ、イジワル?」
「……じつのとこ、あたし。いじわるじゃなくて、自信作だったから、素直な率直な意見がききたかったの。でも、感想聞いたらもっとやる気でてきたよ!」
 ぐ、とリシャは小さくガッツポーズする。これならきっと、次も上手に――。
「――そういえば、ねーねーしーちゃんは、こっちにきてからなにかこう乙女なお話とかない?」
「アラ。乙女のハナシ?」
 口直しにお茶を飲むシアの目が、獲物を見つけた猛禽のように鋭くなった。
「イイわネ。りっちゃんの彼氏サンのお話、聞かせてくれるノ? 聞きたいナー」
「あ、あたしの話は……」
「あたし様を練習台にしてマデ勝負かける男の子っテ、どんな人なのかナー」
 ソファーの上を四つん這いで渡り、上目遣いでニヤニヤとこちらを見るシアに、リシャはたじたじと目をそらし、挙動不審になる。
「もう、しーちゃん! わかった話すから! にやにや禁止っ!」
「ウフフ、そうネ、まずハどういう出会いだったカ、聞かせテ頂戴♪」
 そして、主にリシャのコイバナをメインディッシュとして、二人のクロノス大祭の夜は楽しく楽しくふけていくのであった。
イラストレーター名:kage