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2人でクロノス大祭

銀の剣に選ばれし騎士・ローラント
先駆ける翠華・ファラーナ

■クロノス大祭『聖夜に降る白雪の中で』

 12月24日、ここラッドシティ中が幻想に包まれる年に一度の特別な日。
 ある者達は謎を追い求め迷宮に、またある者達は祭りに酔い、そして都市国家を包み込む幻想に心奪われる。
 そんな中、都市のとある場所では二つの影が舞い踊る。
「今日は、特別に綺麗だよ。そのドレス似合っているね」
 そう言葉をかけるのは、黒の夜会用のスーツに白いロングコートを着こなし、優しく微笑むローラント。
 それに対し、嬉しそうに微笑み返すのは、白いドレスに二の腕までの白い手袋、白いハイヒール、銀のティアラを着けたファラーナ。彼女には珍しく、髪をストレートに下ろしている姿は、まるで御伽話の姫君のようだ。
 二人は都市中に流れる美しい音楽にのせてダンスを踊る。その様はまるで二匹の蝶が舞うようであり、芸術作品のような優雅さを放っている。
「今年もこうして一緒に居られて良かった」
 ローラントは、今年もこの特別な日をこの女性と過ごせる幸せを噛み締めるように言葉を紡ぐ。
「来年もどこかでこうして一緒に居られると良いですね」
「私もローラントとずっと一緒にいたいね♪」
 ローラントが願った事はファラーナも丁度言おうと思っていたことと同じだった。それがおかしかったのかファラーナは少し弾んだ声で返す。そんな彼女の瞳には相手を包み込むような優しい光が灯っている。
 暫し見つめ合い、音楽がきりのいいところにくると二人はダンスを止める。
「少し休みましょうか?」
 そう言いつつ、ローラントは近くのベンチまで、ファラーナの手を引きつつエスコートする。勿論、ベンチにハンカチを敷く優しさは忘れない。
「寒くないですか?」
 そう聞きつつ、自身のコートをファラーナにかけ、互いの体温が感じられるようにそっと抱き寄せるローラント。
 純白の街、人形達の奏でる美しい音楽、それらが調和し生み出すのは二人だけの空間。
「……ありがとう」
 ファラーナは、照れながらも嬉しそうにローラントの背中に手を伸ばす。
 そして、自然と二人の瞼は閉じられ引き寄せられていく。
 唇が触れた時、二人の心が暖かい何かに満たされる。
 唇を離した時、心の温かさとほんの少しの気恥かしさが二人を包む。
「来てくれて有難う」
 余計な言葉は付けない、いつもお互いを思いあっている二人にはこれで十分なのだ。強く心が結ばれているから――生涯の伴侶と認めた相手だからこそ――。
 その後、二人は家路に着く。勿論ローラントはファラーナを送っていく。
 来年もどこかの都市でこういった時間を共有できることを願いつつ。
 そんな二人の手はしっかりと握られており、二人が付けた雪の上の足跡はずっと同じ方向へと延びていた。
イラストレーター名:笹井サキ