ステータス画面

2人でクロノス大祭

九代目紫焔継承者・ディーター
シューティングスター・デリク

■クロノス大祭『金砂の輝く銀世界』

 日の光が届かなくなった大地を月明かりが照らし出し、夜の訪れを教えてくれていた。
 吐き出した息は白く、指先がかじかむ寒さ。けれど心は温かくて、デリクは思わず頬を緩めて柔らかく笑む。
「この間いい場所見つけたんだ〜」
 そう言って、一緒に行こうと誘ってくれたのはディーターで。彼の方から誘ってくれる事は珍しく、少し驚いた表情をデリクは見せたが、これが嬉しくないわけがない。
「行きたい!」
 よって、とびきりの笑顔でそう答えて。ディーターの相棒である銀に輝く毛並みの狼、ズィルと共に、2人と1匹。今、こうして隣を歩いている。
 どこに連れて行ってもらえるのかとワクワクしながら話すデリクを見て、ディーターもまた嬉しくなり、自然と笑顔が溢れでる。同じ孤児院で育った2人は、本当の双子のように仲がよく、目的地である丘の上まで話題が尽きることはなかった。

「着いた! こっちだよ、デリ」
「ディーたん、待ってよ!」
 坂道をちょうど登り終えたところでディーターが走り出し、デリクも追おうと同じく走り出す。そして追いつくと彼は声を発しようとしたのだが、その言葉は飲み込まれてしまった。
 眼下に広がるは、美しい世界。
 街に降り積もった雪……灯火でそれらが輝き。空から舞い降りてくる金砂は、天の黒を背景に月光を浴び、辺り一面で煌めく。
 そう、瞳の中に映し出されたのは、金砂の輝く銀世界だ。
「綺麗……」
 デリクのその一言が最後。驚きと感激のあまりに言葉が浮かんでこなくて。並んで座り、その後ろでズィルが丸くなると、2人揃ってしばらく何も話さず景色を眺めていた。

「あのさ、デリ」
 沈黙を破ったのは、ずっと何かを言いたげにしていたディーターで、目の前の景色から隣へと視線を移したデリクは、そんな彼の姿に首を傾げる。
「いつも迷惑や心配かけて、ごめん」
「えっ?」
「それから、ありがとう。その……お礼のつもりなんだ。こういう場所、好きでしょ?」
 お詫びの印として、感謝の気持ちとして、この場所を密かに探してくれていた。その事を知ったデリクは、ほんのりと頬を赤らめて言うディーターを見つめていた瞳を、ふんわりと柔らかいものへと変える。
「本当にいつもだよね。毎回大変なんだよ〜。ほら、覚えてる? この間なんか……」
「わー! デリ、その話はもういいから!」
 からかいながらも、嬉しくて堪らないといった表情をしているデリク。彼と視線が絡むと、慌てて口を塞ぎにかかったディーターは思わず笑ってしまう。するとデリクも、嬉しさと楽しさから声を出して笑いだした。
「これからもよろしくっ、デリ」
「うん。デリの方こそ、よろしくね。ディーたん」
 笑顔が溢れると、景色はもっと輝きを増して見える。

 並んで見つめるは金砂の輝く銀世界。
 吐く息は白く、空気は冷たく感じるけれど。
 繋いだ手は、とても温かかった。
イラストレーター名:雫月ユカ