■クロノス大祭『いつも通りの幸せ』
今日はクロノス大祭。多くの恋人達がその絆を深める一日である。しかし深める絆は恋心だけにあらず。夜の空を白い雪が彩る中、暖炉の暖かさに包まれ二人の姉妹は今日という日々を楽しく祝いあっていた。
「そろそろ良いかな……とその前に」
家の中とはいえ寒い冬の中では冷えるかもしれないと、ジニーは普段纏っているポンチョをヴィルにかけてあげた。妹を気遣う姉心で心まで温かくなり、ヴィルは幸せな気分に包まれる。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「それじゃあクロノス大祭を祝して……」
「「いただきまーす!」」
姉であるジニーが今日の為に調理した料理。その中でも特に目立っていたのは、美味しそうに焼けた肉と野菜が彩る鉄板と、同じく美味しそうに焼けた魚と野菜が彩る鉄板の二つだ。
この二つは互いの大好物である。家族としての絆をより深める今日という日の為、この二つの料理に関しては特に心を込めて調理したらしい。
大好物を目の前にヴィルはもちろんの事、作ったジニー本人も思わず笑みがこぼれる。二つの料理がこうして並ぶ機会が滅多に無い事もその要因の一つだろうか。
姉妹で過ごす時間は、美味しい料理と楽しい談笑の中でどんどんと過ぎてゆく……気付けば、既に料理を全て食べ終えていた。
「料理も食べ終わったし、そろそろプレゼントを交換しましょ?」
「それじゃあわたしから。はい、お姉ちゃん!」
妹のヴィルから渡されたのは小さな包み。開けてみると、中には薄手の黒皮手袋が入っていた。
「うわ、結構スタイリッシュなデザイン! ありがとうジニー。じゃあわたしからはこれ」
姉から渡されたプレゼントを開けてみると……向日葵がとても可愛らしいポーチが出てきた。
こんなに可愛らしいポーチをヴィルはどの店でも見た事が無い。当然である。このポーチはジニーの手作り、夜なべまでして大切な妹の為に一生懸命編んだ物なのだから。
「ありがとうお姉ちゃん! 一生大事にするねっ!!」
「うん、わたしも一生大事にする!」
プレゼントを胸に抱き、互いの想いを深く感じあいながら笑顔で笑いあう二人。
今日という日々を経て、二人の絆はますます深まったに違いないだろう。
お互いが何時までも幸せでありますように……そんな願いの中、クロノス大祭の夜は過ぎてゆくのだった。