■クロノス大祭『独り身同士の酒盛り〜悔しくなんかないんだから!〜』
「クロノス大祭がなんだー! 恋人のイベントがなんだー!」(「もしかして、既に酔ってる!?」)
ユエの切ない叫びが暖かな室内に響き渡る。
彼女をクロノス大祭の打ち上げに誘ったドゥンストは、少し引き気味である。
誘いをかけた際にすごくノリノリで来てくれたので「わあい」なんて喜んでいたのだが……、これである。
(「折角のお祭りなのにお相手がいないって寂しいのよね。だから、親友のフィンスを巻き込んで酒盛り始めちゃうっ!」)
「あらあら〜、フィンス。グラスが空じゃない、もっと飲んで飲んで!」
ドゥンストがやっとグラスを空けると、ユエは花のような笑顔を浮かべてすかさず注ぐ。
パーティらしい豪華な料理もテーブルには用意されているのだが、さっきから減っているのは酒だけだ。
麗しい女性にお酌してもらうのは嬉しいのだが、彼女の背後で空き瓶が山を作っているのを見ると、心配しかない。
「……ありがと〜、でも、あんまり飲みすぎちゃあだめだよ?」
「いいじゃない、お互い独り身なんだし、寂しいクロノス大祭よー!」
苦笑しつつたしなめるドゥンストだが、ユエは豪快に叫び返す。
そのユエの笑顔を見ると、ドゥンストとしてもこれ以上何も言えることは無い。
完敗である。
「寂しいクロノス大祭より、友達と過ごすクロノス大祭の方が楽しいじゃないっ! ――やけ酒なんかじゃないんだからねっ!!」
(「お互い独り身だもんねえ、さみしいよねえ」)
「……でもうん、お友達のユエさんと過ごせてよかった。楽しかったよ」
「嬉しいこと言ってくれるじゃない! さ、まだまだ飲むよ――っ!」
今にも踊りだしそうなほどハイテンションなユエを微笑ましく眺めつつも、彼女の二日酔いの心配をするドゥンスト。
(「終わったら、ユエさんを家までしっかりと送り届けなきゃ」)
変わらぬペースで酒瓶を空けていくユエを前に、自分は酔い潰れる訳にはいかないと決意をするドゥンストなのだった。