■クロノス大祭『狸は喜び庭駈け回り 狐は炬燵で丸くなる(一部例外有)』
街が寒風の中、賑わいを増している頃。情緒溢れる建屋に住まうマンジと仔狐ごんのもとに、メイシュと豆狸ぼんが遊びに来ていました。
「雪綺麗! 砂も綺麗!」
空から降る白銀の砂と黄金の砂に、メイシュとぼんは両手を広げてくるくる回ります。お揃いのマフラーをひらひらさせて、庭の上を跳ね回りました。
メイシュが跳ねるのに合わせて新雪はさらさら散ると、ぼんは転がると雪だるまのように白く化粧をしていきます。
「ぼんだるま!」
メイシュはそれを見て大笑い。ぼんより一回り大きな雪玉を作り上げると、その上にぼんに座ってもらいます。その姿は雪だるまならぬぼんだるまでした。
こうして、次々に雪と戯れては楽しい遊びに興じる二人。その様子を、子狸のあずは、家の縁側から眺めていました。混じろうと思うのですが、縁側から雪に足を伸ばしては、引っ込めてを繰り返しています。それと言うのも、初めて見る雪、初めて触る雪に馴染めなかったからです。感じたこともない、さらさらとしてしっとりとしてふんわりとした触り心地に、背中の毛まで立ってしまうような冷たさなのです。メイシュとぼんはなんでこんな冷たい雪まみれになれるのだろうと、不思議に思います。
その内、ぼんだるまに気をよくしたメイシュとぼんは、雪で色んなものを作り始めました。手を真っ赤にしながら、大きな家や、ぼんの顔やメイシュの顔。マンジの顔などを作ろうとしましたが、上手にはできませんでした。
「そうだ、ぼん。これをこうして……」
そのうち、メイシュが何かを閃いて、ぼんと一緒に一生懸命次の何かを作り始めます。そして、できたっ! とメイシュの叫び声が庭に響くと、メイシュとぼんは縁側に駆け寄り、あずをまたぐようにして、こたつの中でのほほんと眺めていたマンジのもとに駆け寄ります。
「父様っ! プレゼント!」
メイシュが差し出したのは、雪で作った兎でした。細い葉の耳に、柊の赤い実でまんまるお目めです。
「ほ。こりゃ可愛ぇ雪兎じゃのぅ……おや。貰うて良ぇんか? 嬉しなぁ。ありがとぉ。溶けてまう迄、大事にさせて貰うわな」
自然と笑みが零れるマンジ。丁寧に受け取ります。
急に騒がしくなったので、こたつからごんも這い出てきました。すると、目の前にはマンジとメイシュの笑顔。そして机に乗った雪兎。くあぁと一つ欠伸をすると、いつまで溶けずにいてくれるかしら、愉快な雪の日だとしみじみ味わうのでした。