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2人でクロノス大祭

タンドルプワゾン・ギィアール
小悪魔ティアラ・ジュナイツ

■クロノス大祭『はっぴーめりーくろのす!』

 喧騒に包まれるバザールで、二人の男女がはしゃぎながら歩いていた。
 やや不健康そうな顔立ちの金髪の青年、ギィアールと、少女のようにも見える桃色の髪の女性、ジュナイツ。同じ旅団に所属する二人は、とても仲良しで――今日も、一緒にバザールに買い物に来ていた。
「わーい! お買い物ー!」
「ギィさんとご一緒にお買いもの、とっても嬉しいですわ♪」
 隣に並んで、無邪気に笑い合う二人。人々で賑わうバザールでの買い物は、それだけでも楽しい。
 だけど、ギィアールも、そしてジュナイツも。それぞれ、お互いに言えない目的を胸に秘めていた。
(「うひひ! ジュナを驚かしちゃうもんね!」)
(「ギィさんにこっそりとプレゼントを買って、驚かせちゃいますわ!」)
 レッツ・サプライズ――そう、この二人、お互いに内緒で、クロノス大祭のプレゼントを買おうとしていたのである。

 しかし、目の前の相手にバレないように、プレゼントを選ぶのはなかなかに難しいもので。
「あっ、ジュナ! あっちの店ってすごく良い感じじゃないカナ!?」
 女の子向けの可愛い小物を売る店の前で、あからさまにジュナイツを先に行かせようとするギィアールだったり。
「ギィさん、ほら、あそこに綺麗な小鳥が飛んでいますわっ!」
 男性向けのアクセサリーを売る店の前で、不自然に空を指差してギィアールの視線をそらそうとするジュナイツだったり。
 二人とも、自然な演技というには程遠くて――これが普段であれば、相手の様子がおかしいことには気付きそうなものだが、プレゼント選びにいっぱいいっぱいな二人にそんな余裕はない。
 それぞれに挙動不審の限りを尽くして、二人はようやく、目的のプレゼントを手に入れることができた。

 ギィアールがジュナイツに選んだのは『宝物』という名を冠する香水。ピーチ、アプリコット、ホワイトローズなどが上品に香る――華やかな中にも、可愛らしさを秘めたものだ。

 そして、ジュナイツがギィアールに選んだのは、美しい翡翠色のパールを数箇所に散りばめた、男性用のシルバーブレスレット。お洒落が大好きな彼女が、彼のために一生懸命選んだ一品。

 相手へのプレゼントを手にする二人に、思わず笑みがこぼれる。
 ――どうか、大好きな相手の笑顔が見られますように。
イラストレーター名:ざらい