■クロノス大祭『Fantasy In Khronos Night』
金の砂と白い雪が舞う夜空は、まるで黄金のオーロラが輝いている様に見えて美しい。不思議で幻想的なこの光景は、一年に一度しか見ることができない。
エルスとアランの兄妹は、白い息を吐きながら、二人で歯車に登った。
そして、高いところにある、雪がいっぱい積もった広い歯車の上に到着すると、小さなかまくらを作ってランタンを灯した。
下にいた時よりも少しだけ、近くなった夜空。
辺りには、二人の他に誰もいない。祭りでにぎわう人の声も聞こえない。
雪が金砂と共にきらめきながら、ただただ音もなく降っている。
かまくらから暖かそうなランタンの光が漏れ、周囲をほんのり明るくしていた。
アランは、寒くないようにと幼い妹のエルスを抱きしめ、被った毛布で二人ごと包んでいる。
ふわもこの暖かい毛皮から顔を出して、エルスは夜空を見上げた。
金砂の輝き、純白の雪、夜の闇の中で黒く見える歯車。
今夜のラッドシティは、とても不思議で神秘的な雰囲気だった。
そんな景色を眺めていたエルスの視界に何かが映る。
「えっ……?」
エルスは、一瞬雪の中に、長い耳で白くてふわもこな生物がいたように見えた。
軽やかな身のこなしで、雪の中を走り去る。そんな光景を見た気がして、少しだけ身を乗り出した。
『……ぴょん』
「おい、さっきの……?」
今度は、アランも目撃したようだった。
星霊クロノスみたいに、長い耳で白くてふわもこ。
アランはエルスと同じ方向を見つめ、柔らかくて美味しそうだったと、こくんと唾を飲む。
星霊クロノスが見えれば幸せになると誰かが噂していたことを思い出し、アランはエルスに教えた。
「本当?」
エルスは瞳を輝かせてアランを見上げた。
その嬉しそうな表情に、アランも笑顔を浮かべる。
黄金の砂が美しく輝き、白い雪と交じって夜空を彩っていた。こんな特別な光景を見ることができるなんて、すでに幸せ。
「「メリークロノス」」
ラッドシティの夜空の下で、兄妹は祝福の言葉を交わした。