■クロノス大祭『toujours ensemble』
「ラッドシティでしか見られない景色だよね……」「本当。金の砂と一緒に降って、きらきらきれい」
きらきら、ふわふわ。
しんと静まりかえった夜は、雪と金の砂の降る音すら聞こえてきそう。
フィルは青い手袋に包まれた指をそっと伸ばすと、雪に紛れてアルカナの髪に絡んだ花びらを摘む。アルカナが嬉しそうに、銀色の瞳を細めた。
そのままフィルの手をアルカナの手が追いかけ、手と手が自然と繋がれる。
大祭も終わった夜、小さな噴水広場にいるのは二人だけ。ステージは石畳、ライトは月明かりで充分。滑るようにステップを踏み始め、二人だけのダンスパーティーが始まった。
「今日は、すごくすごーく楽しかったの。たくさん思い出ができて、嬉しかったのよ」
「うん。私も沢山思い出が出来ちゃって……どうしようかなって思ってたところ」
月明かりを受けて、アルカナの金髪がきらきら光る。フィルの言葉を受けて微笑んだ。
「アル、寒くない?」
澄んだ藍の目に覗き込まれ、アルカナはふふりと笑う。
「大丈夫なの。フィルの手があったかいから、ぽかぽか」
「そう……? でもアルの手の方が温かいよ」
ふふん、フィルも笑った。手と手をしっかり握り合って、けれど身体は触れるようで触れないような、不思議で心地よい距離とリズム。
ひらひら、ふわふわ。
フィルの青いドレスが鮮やかに揺れ、アルカナの緑のドレスが華麗に舞う。石畳に伸びる影も、優雅に踊った。きっとその輝きは、金の砂や月の光だけではなくて。
「ずっと一緒にいようね」
「フィル、だいすき。だいすきなの」
「私もずっとずっと大好きだよ……!」
きらきら、ふわふわ。
二人の間の大切な言葉を、白い雪と金の砂が彩っていく。
柔らかな紅色を頬に乗せ、アルカナは心の底から、幸せそうに微笑んだ。
「だいすきなフィル。わたしの自慢の、親友なのっ」
雪と金の砂が降る中、二人で微笑み合って。
今はただ、月の元で二人きり、踊り続けた。